Du J, et al. Diabetologia. 2021 Aug 17.
院長ブログ
2021.09.28 | お知らせ
健康講座327 妊娠糖代謝と子供の屈折異常
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
妊娠糖尿病や妊娠前から糖尿病であった母親の子どもは、近視や遠視などの屈折異常が多いというデータが報告されたました。
屈折異常とは、目のスクリーンである網膜にピントが合わない状態のことで、具体的には、近視や遠視、乱視を指すようです。軽度の屈折異常は眼鏡で光学的に調整可能だが、幼児期の重度の屈折異常は不可逆的な視覚障害に至ることがあります。
屈折異常はここ数十年増加し続けており、その原因は非遺伝的因子の影響が大きいと考えられているようです。例えば、パソコンなどで長時間のディスプレイ操作を行ったり、野外活動が少ないことは、軽度から中等度の屈折異常の非遺伝的リスク因子として知られています。
今回の研究は、デンマークの全国規模の住民研究のデータを用いられました。1977~2016年に生まれた247万580人の子どもを長期間追跡し、母親の妊娠前からの糖尿病または妊娠糖尿病と、子どもの高度屈折異常との関連を調べたのです。追跡は子どもの出生時点からスタートし、25歳に至るか2016年12月31日に至るまでの間に高度屈折異常と診断されるか、もしくは移住や死亡による追跡打ち切りまで継続したようです。
この間の糖代謝異常妊婦は5万6,419人(2.3%)で、1型糖尿病が0.9%、2型糖尿病が0.3%、妊娠糖尿病が1.1%でした。また、糖代謝異常妊婦は1977年の0.4%から2016年の6.5%へと経年的に増加しています。糖代謝異常妊婦は糖代謝正常の妊婦に比較して、高齢で過去の妊娠回数が多く、教育歴が長く独居者が多かったようです。
最大25年間の追跡期間中に、糖代謝正常妊婦の子ども1万9,695人と、糖代謝異常妊婦の子ども553人が高度屈折異常と診断されました。交絡因子を調整後、糖代謝異常妊婦の子どもは、高度屈折異常のリスクが39%有意に高いことが明らかになったのです。屈折異常のタイプ別に見ても、遠視は37%、近視は34%、乱視は58%、いずれも有意にハイリスクだったのです。
妊婦の糖尿病のタイプ別の比較では、1型糖尿病妊婦の子どもでは32%のリスク上昇、2型糖尿病妊婦の子どもでは68%のリスク上昇が見られました。また、母親が糖尿病性の合併症を有していなければ18%のリスク上昇であるのに対して、糖尿病性合併症を有している妊婦の子どものリスクは105%増と、2倍以上ハイリスクだったのです。
このほかに、小児期には遠視が多く発生し、10代から若年成人期には近視が増えることが分かったのです。
新しい知見でした。参考にしてください。
原著