Kitano N, et al. Prev Med Rep. 2020; 20:101213.
院長ブログ
2021.09.14 | お知らせ
健康講座312 睡眠とメンタル
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
睡眠時間や身体活動が少ないとメンタル面に悪影響が現れることは、多くの人が理解しているかと思います。
今回、平日の座位行動や低強度身体活動(ゆっくり歩行や家事など)の時間を1時間減らし、それを睡眠時間に充てると、メンタル不調を抱えたり仕事への意欲が低下したりする確率が減ると研究結果がございました。一方で中~高強度の身体活動時間(運動やスポーツなど)を加減してもメンタル面への影響はそれほど大きくないという結果でありました。
研究参加者は、10日間加速度計を装着して生活することに同意した1,647人。加速度計の記録と、睡眠時間に関する調査から、24時間をどのように過ごしているかを分析。メンタルヘルスは、心理的ストレスと、ワークエンゲイジメント(仕事への活力)を評価しました。心理的ストレスの評価には、K6スコアという指標を用い、スコアが5点を超える場合を、心理的ストレスがある状態と判定。ワークエンゲイジメントの評価には、UWES-9スコアという指標を用い、スコアが3点未満の場合を、ワークエンゲイジメントが低下した状態と判定したようです。
平均年齢は50.2±9.5歳、女性が68.6%を占め、23.4%が営業職であり、大半は短大卒以上のフルタイム勤務者だったようです。
平日の時間配分とメンタルヘルスに、有意な関連が認められたのでございます。具体的には、睡眠時間が長いほど心理的ストレスが低く、ワークエンゲイジメントが高く維持されていたとのことです。一方、中~高強度身体活動の時間に関しては、メンタルヘルスと関連がなかったようです。また、休日の睡眠や身体活動の時間は、いずれもメンタルヘルスと関連がなかったです。
さらに、座位行動や低強度身体活動の時間を減らして、それを睡眠に充てることで、メンタル面の問題を抱えにくい可能性があると明らかになりました。例えば1日に60分の座位行動を睡眠に充てた場合、心理的ストレスを抱える確率が20.2%減少し、ワークエンゲイジメントが低下する確率が11.4%減少すると推計されたのです。また60分の低強度身体活動を睡眠に充てた場合は、心理的ストレスを抱える確率が26.6%減少すると考えられました。
平日の時間配分が、労働者のメンタルヘルスと有意に関連していることが分かりました。座位行動や低強度身体活動の時間を睡眠に割り振ることで、心理的ストレスをため込まずにワークエンゲイジメントを高めながら働くことにつながり、労働者のメンタルヘルス管理に有効な対策となる可能性があるのです。日常生活での座位行動(職場での座業、余暇時のテレビ視聴やパソコン利用など)をそれぞれ見直し、睡眠時間を充分確保する取組みが必要かもしれませんね。
なお、欧米からは、中~高強度身体活動に充てる時間を増やすことがメンタル不調改善に有効という、本研究とは異なる結果も報告されています。その相違の理由については、日本は世界的に見て睡眠時間が短い国であるため、睡眠時間を増やすことによるメリットが強く現れるのではないかと推察されます。
いずれにしろ、しっかりとした睡眠はとても大事でございます。
原著