Dashti HS, et al. Nat Commun. 2021 Feb 10.
院長ブログ
2021.10.16 | お知らせ
健康講座351 昼寝遺伝子
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
昼寝をよくする人は、遺伝子が関与しているかもしれません。米ハーバード大学医学部の研究により、昼寝に関与する123カ所の遺伝子座が特定されたのです。
今回の研究では、英国の長期大規模バイオバンク研究であるUKバイオバンクの参加者45万2,633人の遺伝情報と、これらの参加者の昼寝の頻度に関する報告の結果を分析して、昼寝の分子レベルでの解明を試みたようです。解析には、全ゲノム関連解析(GWAS)を用いた。一部(10万3,711人)の参加者には、アクチグラフィーと呼ばれる時計型のデバイスを最長7日間装着してもらい、昼寝の指標となる日中の非活動のデータを取得したとのことです。
その結果、昼寝に関連する123カ所の遺伝子座が特定されました。また、アクチグラフィーのデータ分析から、参加者の昼寝に関する報告の正確性についても確認されました。
次に、研究グループは、消費者向け遺伝子検査を行う企業である23andMe社が収集した54万1,333人の遺伝情報を用いて、UKバイオバンクの参加者に対する解析で得られた結果の検証を行ったのです。その結果、123カ所のうち61カ所の遺伝子座が確認されました。さらに、これらのゲノム領域またはその近傍にある遺伝子の多くは、睡眠障害に関わる遺伝子(HCRTR1、HCRTR2)や睡眠調節に関わる遺伝子(KSR2)など、睡眠に関係するものであることも判明したのです。
昼寝は単なる環境的・行動的な選択ではなく、生物学的に促されるものであることが明らかになったのです。昼寝に関連するいくつかの遺伝子変異体は、オレキシンによるシグナル伝達と関連しているらしいです。オレキシンは、睡眠・覚醒サイクルの調節に重要な働きをしている神経ペプチドであります。オレキシンはナルコレプシーのようなまれな睡眠障害に関与することが知られています。今回の知見から、オレキシンの産生に関わる経路のわずかな乱れによって、一部の人が通常より頻繁に昼寝をする理由を説明できる可能性があるとのことです。
今回の研究ではさらに、少なくとも、睡眠の傾向、途切れがちな睡眠、早朝覚醒の3つの因子が昼寝に関連している可能性があることが分かったようです。つまり、人によっては平均的な睡眠時間より多くの睡眠が必要であることや、早朝に目覚めた人や、前夜の睡眠の質が低かった人は、昼寝でそれを補っていることが考えられるということでございます。
原著