院長ブログ
2021.10.14 | お知らせ
健康講座349 勃起障害と地中海食
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
地中海式食事療法には、心臓や血管の健康の維持をはじめとして、さまざまなメリットがあることがこれまでに示されてきました。そして新たに、男性の勃起障害(ED)のリスクを抑制する可能性が報告されました。アテネ大学(ギリシャ)からの発表でした。
EDの有病率は加齢とともに増加するが、高血圧などの血管にダメージを与える疾患がある場合、そのリスクがより高くなるのです。高血圧患者のEDリスクは正常血圧者の2倍との報告もあります。EDを有する高血圧患者250人(平均年齢56歳)を対象に、地中海式食事療法の順守状況とEDの重症度との関連を検討しました。なお、地中海式の食事とは、果物や野菜、全粒穀物、オリーブオイルが豊富で、適度な量の乳製品、卵、魚、鶏肉を摂取し、赤肉はあまり食べない食事スタイルのことでございます。
この地中海式食事療法の順守状況を、ふだん摂取している食品に関する質問票の回答から評価しました。一方、EDの重症度は、男性の性的健康度を評価する指標(SHIM)を用いて判定したようです。このほか、勃起機能にも関連する男性ホルモンであるテストステロン値を測定し、心エコー検査により冠動脈の血流予備能も評価しました。また、血管の弾性を調べる検査により動脈硬化の進展レベルを把握しております。
解析の結果、地中海式食事療法に則した食事をしている男性は、冠動脈血流予備能とテストステロン値が高く、動脈硬化は進行しておらず、そしてEDの重症度が低いことが多いという関連が明らかになったのでございます。地中海式食事療法は血管を保護し、中年期に生じるテストステロン分泌低下を抑制することによって、ED症状の進行を予防する可能性があるようです。
EDと心血管疾患は連続的な病態と言えます。一般的に、男性が心血管イベントを起こすよりも先に、EDの症状が現れることが多いようです。地中海式食事療法は血管内皮機能の維持に適した食事スタイルであることが示されています。血管内皮が健康であれば、組織の必要性に応じて動脈が拡張し、より多くの血液をそこに運ぶことができるのです。地中海式食事療法が、陰茎に血液を運ぶ動脈の機能改善にも役立つことは予想できますね。
地中海式食事療法は、動脈の拡張を促す一酸化窒素の産生能力の向上にも役立つ可能性があり、結果としてEDへの効果を期待できます。ただし、現在EDの症状のある男性が地中海式食事療法を始めたからと言って、直ちにEDが治るわけではないです。むしろ、EDの予防に向いていると思われます。
参考までに。