院長ブログ
2023.05.15 | お知らせ
健康講座644 ”セマグルチドによる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)関連肝硬変治療:ランダム化プラセボ対照フェーズ2試験の結果”
この研究は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)関連の肝硬変患者における新たな治療法の有効性と安全性を試験するものでした。その治療法とはセマグルチドという薬物で、この研究では2.4mgのセマグルチドを週1回、48週間にわたり皮下注射するという方法が採用されました。
実験は多国籍、多施設で行われ、対象となったのはNASHと肝線維化(Kleiner F4)を持つ18~75歳の男性および女性でした。71人の患者が登録され、その中から47人がセマグルチド群、24人がプラセボ群にランダムに割り当てられました。
治療の効果を評価するための主要エンドポイントは2つありました。1つ目は、48週間の治療後に行われる生検によって確認される肝線維化の1段階以上の改善。2つ目は、NASHの病状が悪化していないことを示す患者の割合です。そして、これらの評価は病理学的な観点から行われました。
結果として、セマグルチド群では肝線維化の1段階以上の改善とNASHの病状の悪化なしを達成した患者の割合がプラセボ群と比較して有意に高かったことが明らかになりました。また、治療による有害事象の数についても、両群間で有意な差は見られませんでした。
したがって、この研究からは、セマグルチドがNASH関連の肝硬変患者に対して安全で、肝病変の進行を防止する可能性があることが示唆されました。ただし、これはフェーズ2試験の結果であり、より多くの患者を対象とした大規模な試験が必要であるとも指摘されています。これは、新たな治療法の有効性と安全性を確認するための一般的な手順で、今後のフェーズ3試験でより詳細なデータが得られることが期待されています。