院長ブログ
2023.06.05 | お知らせ
健康講座683 ”ガーリック・ブレス: 嫌われる美味しさの香りとその科学”
みなさん、こんにちは!小川糖尿病内科クリニックからお送りします。今日は、私たちの食生活においてなくてはならない食材、それがニンニクについてお話ししたいと思います。その風味豊かな味わいは、古代から現代まで様々な料理に活用されてきました。しかし、その風味が口の中に長時間残り、時には我々を困らせることもあるのです。そう、その名もガーリック・ブレス、つまりニンニク臭です。なぜ私たちはニンニクの風味を愛し、その後の口臭を嫌うのでしょうか?この謎を解き明かしていきましょう。
まずはじめに、ニンニクを刻むときに起こる化学反応から見ていきましょう。ニンニクを細かく切ると、「硫化物」という化学物質が放出されます。この硫化物がニンニクの独特の香りを形成する主役なのです。だからこそ、私たちはその風味を心から愛することができるのですが、一方でこれが口臭の主な原因でもあります。
また、ニンニクの魅力はその潜在的な健康効果にもあります。研究によれば、ニンニクに含まれる化合物は血圧を下げる効果や抗菌作用がある可能性が示唆されています。これらの利点が、私たちが無意識にニンニクを食べるように仕向けているかもしれません。ただし、その効果は口臭という形で逆効果をもたらす場合があります。
食後の口臭の多くは、口腔内に残った食物が腐敗することで生じます。しかし、”真の”ガーリック・ブレスの発生源は胃にあります。食べたニンニクは胃液によってさらに分解され、硫化物やビタミン、ミネラルが放出されます。これらの大部分は腸でさらに処理されますが、アリルメチル硫化物(AMS)という微小な分子だけが、胃壁をすり抜けて血液に混ざるのです。
AMSはニンニクの風味成分の一部で、その小さなサイズのため、短時間で血液中に混ざり合い、呼吸と共に体外に排出されます。すると、私たちが感じるのがその独特なニンニク臭なのです。
このガーリック・ブレスは最大で24時間も続くことがありますが、一部の食物がその軽減に役立つと考えられています。リンゴやレタス、ペパーミントなどはその一例で、これらに含まれるフェノール化合物が硫化物と結びつくことで、硫化物の揮発を抑えるのです。これにより、ニンニク特有の風味が空気中に広がるのを防ぐことができるのです。
それでは、今回のお話をここで終わりにしましょう。次回もお楽しみに!