院長ブログ

健康講座718 ”肝硬変患者の7割が経験!驚くべき「こむら返り」の科学とその対策”

 みなさん、こんにちは。小川糏尿病内科クリニックです。初めてこちらを訪れていただいた方にも、リピーターの方にも、常に新しい情報や最新の医療知識を提供できるように努めています。

今日は、夜中に足がつる、いわゆる「こむら返り」についての話題を取り上げたいと思います。これは特に、肝硬変患者の方々に多く見られる現象で、その患者の約7割以上がこむら返りを経験しているといわれています。

こむら返り、または筋肉のけいれんは、一般的には運動不足や不適切なストレッチ、脱水症状、電解質の不均衡などが原因となります。特に、マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩に重要な役割を果たし、その不足は筋肉のけいれんやこむら返りを引き起こす可能性があります1

しかし、肝硬変の患者さんにおけるこむら返りは、これらの一般的な原因とは異なる特有の要素が絡んでいます。肝硬変は肝臓の機能不全を引き起こし、この結果、ミネラルやアミノ酸のバランスが乱れる可能性があります。肝硬変患者においては、アミノ酸の不均衡が一因と考えられており、BCAA(分岐鎖アミノ酸)製剤がしばしば使用されます2

さらに、肝硬変患者に見られる他の問題としては、カルニチンの不足があります。カルニチンは、脂肪酸をエネルギーに変換する過程で重要な役割を果たし、その不足は筋肉のけいれんを引き起こす可能性があります3。そのため、カルニチンの補充も考慮されます。

また、東洋医学の視点からは、芍薬甘草湯が筋肉の緊張を和らげる作用があると考えられており、こむら返りの治療に役立つとされています4

肝硬変を持たない方々にとっては、こむら返りの予防と対策には、適切な運動、充分な水分補給、そして栄養バランスの良い食事が重要です。特にマグネシウムは、全粒穀物、豆類、野菜、ナッツ、種などに豊富に含まれており、これらを食事に取り入れることで補給することが可能です5

このように、筋肉のけいれんやこむら返りは、栄養素の不足や不均衡、特にマグネシウムやアミノ酸、カルニチンの不足が原因となる可能性があります。適切な食事や補充物により、これらの症状を予防または軽減することが可能です。

私たちのクリニックでは、各患者の健康状態やニーズに合わせた適切なアドバイスと治療を提供することを心がけています。あなたが健康な生活を送るためのサポートをすることが私たちの使命です。何か質問や懸念があれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。

Footnotes

  1. Nielsen FH, Lukaski HC. Update on the relationship between magnesium and exercise. Magnes Res. 2006 Sep;19(3):180-9.

  2. Muto Y, Sato S, Watanabe A, et al. Effects of oral branched-chain amino acid granules on event-free survival in patients with liver cirrhosis. Clin Gastroenterol Hepatol. 2005 Jul;3(7):705-13.

  3. Malaguarnera M, Gargante MP, Russo C, et al. L-carnitine supplementation to diet: a new tool in treatment of nonalcoholic steatohepatitis–a randomized and controlled clinical trial. Am J Gastroenterol. 2010 Jun;105(6):1338-45.

  4. Kondo T, Kishi Y, Fushimi T, Ugajin S, Kaga T. “Shakuyaku-kanzo-to” (TJ-68), a Kampo medicine, alleviates postherpetic neuralgia with suppression of proinflammatory cytokines in patients with herpes zoster. J Pain Symptom Manage. 2010 May;39(5):882-8.

  5. Rosanoff A, Weaver CM, Rude RK. Suboptimal magnesium status in the United States: are the health consequences underestimated? Nutr Rev. 2012 Mar;70(3):153-64.