院長ブログ

健康講座253 脳の若返りと運動

みんさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科でございます。


 さて、今回は、長い間、座ってばかりいる生活を送っていた高齢の人でも、有酸素運動を半年間行うことで、思考力や記憶力は向上する可能性があるとするカルガリー大学医学部(カナダ)の研究を紹介致します。有酸素運動により脳への血流が増大し、加齢による影響にも対抗できるやもしれません。人間だれしも、加齢とともに頭脳や身体は衰えるものでございます。しかし、年をとってからでも運動を始めることで、脳も若返るかもしれません。

 この研究は、記憶障害や心疾患の既往がない成人206人(平均年齢66歳)を対象にしたものです。思考力と記憶力に関する試験を研究の開始時と終了後に実施して、対象者の認知機能を評価したほか、経頭蓋超音波検査で脳の血流速度を測定したのです。対象者は、週3回の監督つき運動プログラムを6カ月間行いました。運動量は、1日平均20分から始めて、1日平均40分以上まで徐々に増やしていった。さらに、対象者は週に1回、自分自身で運動するようにとの指示を受けていたようです。

 その結果、運動プログラム終了時点で、なんと、対象者の実行機能に5.7%の改善が認められようでございます。実行機能には、集中する、計画する、指示を思い出す、並行作業を行うなどに関する能力が含まれます。また、情報処理速度の指標である言語流暢性は2.4%向上していたのです。この言語流暢性の改善は、5歳の若返りに相当するものだそうです。

 さらに、試験終了後の脳への血流は、試験開始前と比べて平均2.8%増大しており、通常、加齢とともに低下する思考力の改善に関連していました。ここから、活発な運動を6カ月間続けることで、脳への血流が増大し、言語能力のほか、記憶力や頭脳明晰さも向上する可能性が期待できそうです。

 有酸素運動が全身の血流改善に寄与することは分かっていたが、脳内の、特に言語流暢性や実行機能に関わる領域への血流も改善する可能性のあることが分かりました。アルツハイマー病をはじめとする、認知症や脳疾患のリスクがある高齢者には大事なポイントになるかもしれません。


 運動は大事。

原著