Brinkley TE, et al. Circulation. 2021;144:684-693.
院長ブログ
2021.10.10 | お知らせ
健康講座344 血管年齢の若返り
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
肥満の高齢者では、適度な運動を行いつつ、1日の摂取カロリーをわずか200kcal減らすだけで、体重が減少するだけでなく、血管の健康が大幅に改善する可能性があるとする研究結果が報告されました。研究を実施したのは米Wake Forest School of Medicine老年学・老年医学分野です。
大動脈は体の中で最も太い血管であり、心臓から脳や肝臓などの重要な臓器へ酸素と栄養素を運ぶ役割を担っています。大動脈は、加齢に伴い硬くなるものです。大動脈が硬化すると、心臓が体のすみずみに血液を送るために、より高い血圧が必要になり、心臓に負担がかかるのです。動脈硬化の要因には、高血圧や糖尿病のような慢性疾患、肥満などが代表的です。
今回、座位時間の多い65〜79歳の肥満者160人を対象に、有酸素運動とカロリー摂取量の削減の組み合わせが大動脈硬化にどのような影響を及ぼすかを調べました。対象者は20週間にわたって、通常の食生活を送りながら有酸素運動を行う群(56人)、運動を行い、かつ1日のカロリー摂取量を200kcal(55人)または600kcal(49人)減らす群の3群にランダムに割り付けられました。有酸素運動とは、最大心拍数の65〜70%を維持した状態でトレッドミルを使った運動を1回30分間、週に4回行うという内容だったようです。動脈の硬化度については、脈波伝播速度(PWV)や大動脈進展性の測定のほか、心臓MRI検査による大動脈の構造や機能の評価により確認したようです。なお、PWV値は、血管が硬いほど高くなるものです。
その結果、20週間での体重減少量は、運動のみを行った群で1.66kgであったのに対して、運動と200kcalのカロリー削減を組み合わせた群では8.0kg、運動と600kcalのカロリー削減を組み合わせた群では8.98kgであり、運動にカロリー削減を取り入れた群で有意な減少が認められました。その一方で、大動脈の硬化度については、運動と200kcalのカロリー削減を組み合わせた群でのみ変化が認められ、大動脈進展性の21%の上昇、PWVの8%の低下が確認されたのです。その他の2群では、有意な変化は認められなかったようです。
カロリー削減量が最も大きかった群では、それよりもカロリー削減量が少なかった群と同程度に体重と血圧が低下したにもかかわらず、大動脈の硬化度には改善が認められなかったのは少々驚きでございます。
参考にしてください。
原著