院長ブログ
2021.08.26 | お知らせ
健康講座251 歯周病と糖尿病の密接な関係
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
糖尿病では、合併症として腎障害、網膜症、末梢神経障害などが三大合併症と言われております。しかし、歯周病など口腔疾患も合併症であることはあまり知られていないかもしれません。
糖尿病と歯周病はお互いに関係する
歯周病とは、歯周組織に原発し、歯周組織を破壊する疾患の総称でございます。歯肉炎と歯周炎に大別されるようです。歯肉炎は、歯頚部に付着する細菌の塊であるプラーク(歯垢)により引き起こされる。歯肉炎は歯肉組織に限局した炎症であり、治ることもありますが、歯周炎は歯肉に初発した炎症が、セメント質、歯根膜および歯槽骨などの深い部分に波及した慢性炎症であるそうです。歯周病の検査は、口腔内の衛生状態、炎症程度、歯周ポケットの状態が診察され、歯周病の基本的な治療として、「プラークコントロール」「スケーリング」「かみ合い調整」というものがあるそうです。さらに進行した場合には歯周外科治療として「組織付着療法」「切除療法」「歯周組織再生療法」などが行われます。こうした治療を行って病変の進行が休止しても歯周ポケットが残存する場合、歯周組織を長期にわたり病状安定化させるために行われ、治療により治癒した場合でも、その状態を長期間維持するためにメインテナンスが必要となります。
糖尿病と歯周病の関係はお互いに関係します。糖尿病患者さんでは1型糖尿病、2型糖尿病にかかわらず歯周病の発症および罹患率が増加していることが確認されているのです。ドイツにおける報告では、とくに歯周病が進行する群はHbA1c7%以上であったようです。
「血糖コントロールは歯周病を改善するか」という研究では、歯肉の炎症は改善するが、歯周ポケットの深さは改善しないという結果だったようです。糖尿病で歯周病が重症化しやすい要因としては、歯肉組織微小血管障害、歯周結合組織の代謝異常、酸化ストレス、免疫機能の低下などがあげられます。逆に、「歯周病があると糖尿病になりやすいか」という研究では久山町研究などから関連性は認められたほか、歯周の炎症改善を介して血糖コントロールも改善する可能性があることが示唆されております。
年齢、歯間の不衛生、HbA1c7%以上は歯を失うリスク
糖尿病患者さんに歯周病を合併する問題点として、歯周病が動脈硬化を発症・進展させる可能性がございます。また、2型糖尿病における歯周病重症度と糖尿病腎症発症頻度の相関については、HbA1c6.5以上では危険度が四倍にもなります。そして、歯周病重症度と死亡率の関係について、歯周病が重症なほど死亡率が高く、重症の歯周病では、虚血性心疾患による死亡とともに糖尿病腎症による死亡も多いことが明らかになったのです。
「糖尿病合併症の実態とその抑制に関する大規模観察研究(JDCP study)」では、歯数が20歯未満になる危険が高い項目として、
1型糖尿病では
「年齢60歳以上」「歯間清掃用具未使用」「HbA1c7%以上」
2型糖尿病では
「年齢60歳以上」「歯間清掃用具未使用」「定期歯科検診なし」「糖尿病罹病歴10年以上」「HbA1c 8%以上」
などが報告されました。以上から重要なこととして「良好な血糖コントロール」「定期的な歯科受診」「歯間清掃用具の使用」が示唆されます。
『糖尿病診療ガイドライン2019』やこれまでの知見より、糖尿病と歯周病について
(1)定期的な歯科受診と歯間清掃用具の使用を勧める
(2)1型・2型糖尿病患者は歯周病発症リスクが高いこと
(3)良好な血糖コントロールを目指すことにより歯周組織の炎症の改善が期待できる
(4)歯周病治療は、慢性炎症の改善を介して糖尿病合併症の発症・進展を抑制する可能性があること
(5)糖尿病患者は全員、歯周病治療を受けるべきであること
が提唱されているようでございます。
参考までに。