院長ブログ

健康講座212 妊婦と新型コロナワクチン

 こんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 妊産婦や妊娠を希望する女性に対して、新型コロナワクチン接種にあたっての不安を解消するための声明発表されてきた1)2)。しかし、巷では「ワクチンを打つと不妊になる」「ワクチンによって月経不順になる」といったエビデンスを欠いた情報が現在も流布されており、そうした情報に触れることで不安を持ち、ワクチン接種を見合わせる女性が存在すると聞きます。ワクチン忌避者の割合は若年女性が年配の男性の3倍程度多い、という調査結果も出ており3)、若年者、とくに女性を対象とした正しいワクチン接種の情報提供が出ていたので紹介できれば幸いです。

 小難しいことは置いておいて、結論だけ先に述べますので、あとはゆっくりお茶でも飲みながら流し読みで大丈夫です。

結論

1)新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)で不妊になるという科学的な根拠は現時点ではありません。

2)妊娠中の女性でも mRNA ワクチンを接種して大丈夫です。すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対するワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに流産などの何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。

但し、器官形成期(妊娠12週まで)はできるだけ避け主治医の先生にご相談ください。


 現時点では、妊婦さんに対する接種について⼗分な知⾒がなく、各国で⾒解が分かれてい ますが、世界的な流⾏拡⼤と妊婦の⼀部で重症化することから積極的に接種をすべきとい う考え⽅が⼤勢を占めています。⽶国のACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会)は、妊 婦を除外すべきではないとしていましたが、⼗分な情報を得た個 ⼈の選択ではあるが、妊婦への接種を推奨するとしています。英国では当初妊婦中の接種 を積極的には推奨していませんでしたが、接種のリスクよりも感染のリスクが⼤きいこと から、希望者には接種をためらうべきでないとしています。また、COVID-19 mRNAワ クチンの⽣殖に関する研究はまだ完了していませんが、現時点で胎児や胎盤に毒性がある とかワクチン接種を受けた⼈が不妊になるといった報告はありません。しかしながら、中・ ⻑期的な副反応については、今後も情報を収集する必要があります。

1. COVID-19 ワクチンは、現時点で妊婦に対して短期的安全性を⽰す情報が出つつある が、中・⻑期的な副反応や胎児および出⽣児への安全性に関しては今後の情報収集が必 要である。現時点では世界的に接種のメリットがリスクを上回ると考えられる。 

2. 流⾏拡⼤の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外しない。 特に⼈⼝当た りの感染者が多い地域では積極的な接種を考慮する。接種する場合には、、⻑期的な副反応は不明で、胎児および出⽣児への安全性は確⽴していない ことを事前に⼗分に説明する。同意を得た上で接種し、その後30分は院内で経過観察 する。現時点でmRNAワクチンには催奇性や胎児胎盤障害を起こすという報告は無いが、器官形成期(妊娠12週まで)は、偶発的な胎児異常の発⽣との識別に関する混乱 を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避ける。妊婦には⺟児管理のできる産婦⼈科施 設などでワクチンを接種する事が望まい。直前検査が難しい集団接種や、産科のない診療所など で接種する場合、接種前後1週間以内に妊婦健診を受診するように促す。また,接種後 に腹痛や出⾎、胎動減少などの症状があればすぐに産科を受診するようにする。

 3. 妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅で、感染リスクが⾼い医療従事者、保健介護従事者、 重症化リスクが⾼い肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している場合は、ワクチン接種 を積極的に考慮する。

 4. 妊婦のパートナーは、家庭内での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。

 5. 妊娠を希望される⼥性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。( ⽣ワ クチンではないので、接種後⻑期の避妊は必要ない。 ) 

 

以上学会の提言となりますが、患者さん⼀⼈⼀⼈の背景が違いますので、まずは産婦⼈科の主治医と⼗分にご相談くださ い。 

参考文献

Goldshtein I, et al. JAMA. 2021 Jul 12.