院長ブログ
2021.09.12 | お知らせ
健康講座309 糖尿病と認知症の関連
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
脳梗塞になった後、血糖コントロール次第で認知機能の低下速度を抑えられる可能性を示すデータを、テルアビブ大学(イスラエル)が報告しました。
糖尿病があると脳梗塞のリスクが高いことが知られています。脳梗塞の発症をきっかけに脳血管性認知症になり、それに加齢などの影響が加わり、徐々に認知機能が低下していくことがしばしばあります。今回発表された報告は、そのように進む認知機能の低下を良好な血糖コントロールによって抑制できる可能性を示すものです。
研究の対象は、脳の深部にある穿通枝と呼ばれる血管が詰まって起きるラクナ梗塞というタイプの脳梗塞を発症後、再発予防治療の効果を検証するための研究に登録された糖尿病患者942人。研究登録時および追跡中のHbA1cの変化と、認知機能の変化との関係を検討しました。認知機能の評価にはCASIスコアという、注意力や集中力、短期および長期記憶、言語能力などの測定指標を用いました。
検討の結果、ベースラインのHbA1cが1%高値であるごとに、CASIスコアが0.06、有意に低い値を示した。また、追跡期間中のHbA1cの1%の上昇はCASIスコア0.021の低下と関連していた。
今回の研究では、良好な血糖コントロールと認知機能低下抑制の因果関係までは証明されていないです。しかし、年齢や性別、教育歴、人種、高血圧、BMI、心疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、インスリン使用、うつ病、脳の白質異常など、認知機能に関連する可能性のある因子で調整後も、これらの有意な関係は変わらなかったのです。
高齢化の進展に伴い、糖尿病および脳卒中の有病率が上昇しており、これらの疾患はいずれも認知機能低下や認知症のリスク因子であると思わえます。