院長ブログ

健康講座340 COVID-19とテストステロン

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 男性では、血中のテストステロン濃度の低さが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクに関連するという研究結果が報告されました。

 COVID-19の患者では、概して女性よりも男性の方が重症化しやすいという話を聞きます。その原因として、男女間でのホルモンバランスの違いを指摘されているようです。特に、男性ホルモンの代表格であるテストステロン濃度の男性での高さがCOVID-19重症化の原因である可能性が囁かれてます。

 今回、152人(平均年齢63歳、男性90人、女性62人)のCOVID-19患者を対象に、テストステロン、エストラジオール、およびIGF-1(インスリン様成長因子)の濃度とCOVID-19の重症度との関連を検討したようです。エストラジオールは女性ホルモンであるエストロゲンの一種であり、IGF-1はインスリンに似た構造を持つホルモンであります。テストステロン、エストラジオール、およびIGF-1の濃度は、COVID-19の症状を理由に患者が受診したとき(0日)に、また入院に至った患者では、入院後3、7、14、28日目に測定しました。0日でのテストステロン濃度が判明している男性76人のうち、68人(89.5%)が基準範囲の下限である250ng/dLを下回っていたのでございます。

 152人の対象患者のうち143人(94.1%)が入院し、37人(24.3%)が死亡しました。また、男性患者90人のうち入院に至ったのは84人で、そのうちの66人は重症であったのです。

 解析の結果、3種類のホルモンのうち、男性でのテストステロン濃度のみが、COVID-19の重症化と関連することが明らかになった。すなわち、テストステロンの濃度中央値は、重症のCOVID-19患者では、0日で53ng/dL、3日目で19ng/dLであったのに対して、非重症患者では、0日で151ng/dL、3日目で111ng/dLであったのです。

 また、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸器の使用を要した患者と死亡した患者のテストステロン濃度も、これらの転帰に至らなかった患者よりも低かったようです(ICU入室:49ng/dL対142ng/dL、人工呼吸器の使用:38ng/dL対104ng/dL、死亡:42ng/dL対108ng/dL、いずれも0日の中央値)。

 パンデミックの間、テストステロン濃度の高さがCOVID-19重症化の原因である可能性が疑われてきました。しかし、実際はその逆で、男性ではテストステロン濃度の低さが重症化の原因である可能性のあることが、われわれの研究で明らかになったのでございます。

 テストステロン濃度の測定により、数日のうちにどの患者が重症化するかを予測できる可能性があるかもしれません。COVID-19からの回復期の男性にテストステロン療法が有益であるかどうかについても調べる価値がありそうですね。


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