院長ブログ

健康講座333 電子タバコの知見

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 IQOS(アイコス)やPloomTECH(プルーム・テック)などの加熱式タバコのシェアが日本で急速に拡大しています。禁煙をめざして、あるいは周囲への影響を考慮して紙巻タバコから移行する人も多いですね。

 それでは、ちょこちょこ耳にする“新型タバコ”とはなんでしょう。本邦ではニコチンを薬物として、ニコチン入りの電子タバコの販売が薬機法のもと禁止される一方、タバコの葉を使用している加熱式タバコはタバコ事業法のもと販売されていること、またニコチンを含まない電子タバコにはとくに規制がなく、自由に販売されているという状況らしいです。国際的には電子タバコはタバコではないと定義されることが多いが、本邦では加熱式タバコも含め電子タバコと呼ぶことが多いみたいです。IQOSやPloomTECH、gloといった製品が含まれる加熱式タバコについて記載したいと思います。


 15~69歳の約8千人対象のインターネット調査によると、2015年時点でIQOS、PloomTECHの使用者(30日以内の各製品の使用の有無)は0.5%以下だったのに対し、2017年にはPloomTECHが1%以上、IQOSは3.6%に急増したようです。3.6%という数字を該当年齢の総人口から推計すると、約300万人。少し前ですが、集計中の2018年データではさらに増加しているということです。

 また、IQOS使用者にどのような特徴があるかをみると、女性よりも男性、40代以上よりも20代や30代、やめる気のない喫煙者よりもやめたい喫煙者がより多く使っていることが分かったようです。また、もともと吸わなかった人の1.3%が、2年後にIQOSを使うようになっていたとのことでございます。

 加熱式タバコ使用が広がった背景には、「従来の紙巻タバコに比べて有害性が少ない」という認識が大きく影響していると考えられます。実際、広告では「紙巻タバコの煙と比較して、有害性成分の量を90%低減」と謳われているようです。しかし、これは
広告では「有害性成分9割減」≠病気になるリスク9割減

でございます。

 実際に有害性物質の量はどうなっているのかといいますと、タバコ特異的ニトロソアミンの量は、IQOSでは紙巻タバコの10分の1程度に減っていました。一方、ニコチン含有量を比較すると、紙巻タバコの2,100 μg/本に対し1,200 μg/stickと、IQOS にも紙巻タバコの半分以上のニコチンが含まれているようです。紙巻タバコをIQOSに変えたとしても、ニコチン依存症は維持されるということです。そして、IQOSはじめ加熱式タバコに多く含まれるのが、グリセロールやプロピレングリコールといった物質だという。これらは発がん性物質ではないが、こういった物質を肺深くに吸い込んだときに、人体にどんな影響があるかはまったくわかっていないのです。
 今後も新しい製品は増える館しれません。含有物質の違いに加え、加熱方式の違いなど、製品ごとにますます複雑化する中、リスクを判断していくことは容易ではないです。紙巻タバコにおける肺がんのリスクが明らかになってから、受動喫煙によるリスクを明らかにするまでにおよそ40年かかったのです。

 今ある情報から総合的に判断して、加熱式タバコには紙巻タバコとほとんど変わらない害が使用者本人にあると予測されるともいわれております

 IQOSが紙巻きタバコよりも、有害物質への曝露を減らすことができるますが、曝露の減少により、疾病の罹患率や死亡率を減らすことができるとは言えないという見解です。

 参考までに。
原著