院長ブログ

健康講座402 2型糖尿病患者に対する降圧治療のベネフィット

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 2型糖尿病患者に対する降圧治療は、全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿などのリスクを改善することが、英国・オックスフォード大学の検討で示されました。糖尿病患者さんは平均血圧が高く、血圧の上昇は大血管障害および細小血管障害のリスク因子として確立されているのでございます。


 研究は、2型糖尿病患者における降圧治療と血管疾患の関連を評価するために系統的レビューを行い、メタ解析を実施しました。対象は、1966~2014年に発表された糖尿病患者を含む降圧治療の大規模無作為化対照比較試験に関する論文としました。

 主要評価項目は、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症または増悪、腎不全の8項目としました。収縮期血圧の10mmHg低下における相対リスク(RR)、1,000人年当たりのイベントの絶対リスク減少率(ARR)および10年間の治療必要数(NNT)を算出したようです。

 40試験に参加した10万354例が解析の対象となったようです。収縮期血圧の10mmHgの低下により、主要評価項目のうち以下の6項目のリスクが有意に改善したようです。

 その6項目とは、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、網膜症、アルブミン尿です。

 ベースラインの平均収縮期血圧が≧140mmHgと<140mmHgの試験に分けて解析したところ、降圧治療により≧140mmHgの試験でRRが有意に減少し、<140mmHgの試験では有意な変化のない項目として、全死因死亡、心血管疾患イベント、冠動脈心疾患イベント、心不全が挙げられた。

 降圧薬のクラス別の解析では、全体としてアウトカムとの関連はほとんどなかったようでございます。ARB薬は心不全のRRを有意に低減させたが、データは2つの試験に限られ、信頼区間の間隔が広かったようです。これに対し、カルシウム拮抗薬(CCB)は他のクラスの薬剤に比べ心不全のRRが有意に高かったようでございます。

 一方、CCBは脳卒中のリスクを有意に低下させたが、β遮断薬はこれを増大させたようです。

 2型糖尿病患者では、降圧治療により全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクも改善した。これらの知見は、2型糖尿病患者への降圧薬の使用を支持するもので、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクが高い糖尿病患者では、収縮期血圧をさらに130mmHgへと低下させると、これらのリスクが減少することが示唆されたことになります。