Bai P, et al. JAMA Ophthalmol. 2021 Dec 2.
院長ブログ
2022.01.07 | お知らせ
健康講座432 こどもの糖尿病と網膜症
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
2型糖尿病の子どもは1型糖尿病の子どもよりも、網膜症リスクが高い可能性を示唆するデータが報告されました。米メイヨー・クリニックの研究によるものでございます。
この研究は、住民の医療記録データを遡及的に解析するという手法で行われたものです。1970~2019年に同郡に住んでいた人のうち、22歳未満で糖尿病と診断された人が1,362人(95.7%が白人)存在していたようです。そのうち糖尿病の病型の明確な記録があった606人のうち、525人(86.6%)に少なくとも1回以上の眼科検査が施行されていました。それらの患児は男子が50.3%で、糖尿病診断時の平均年齢は12.1±5.4歳でした。
糖尿病関連眼疾患は、1型糖尿病患児では461人中147人(31.2%)、2型糖尿病患児では64人中17人(26.6%)に記録されていました。2型糖尿病患児が糖尿病と診断されて15年以内に非増殖網膜症を発症するリスクは、1型糖尿病患児の2倍近く高かったようです。
小児糖尿病では病型を特定して、それを患児本人や家族に伝えることが重要と考えられます。そして2型糖尿病であるならこまめに検査を行い、視力を脅かす合併症が起き始めていないか確認した方がよいでしょう。
この研究には、2型糖尿病は発症の時期が明確でないという点で問題もあります。1型なら発症後の短期間で出現する、頻尿や口渇、倦怠感などの症状が2型ではあまり見られないため、治療開始が遅れてしまいがちです。小児2型糖尿病のスクリーニングを徹底することが、成長後の眼合併症抑制につながるのではないかと期待したいところです。
子どもの2型糖尿病の罹患率上昇が将来的に眼合併症を増やしてしまうのではないかとの懸念があります。小児肥満の増加とともに2型糖尿病の罹患率も上昇しているのです。しかも小児2型糖尿病は発症後、直ちに診断されるとは限らないです。5~10年以上たってから診断されることもあるり、その間に合併症が進行してしまう可能性が心配なところです。
糖尿病網膜症の罹患率の上昇を防ぐには、糖尿病の診断から数年以内の治療が大切です。その時期の治療が不十分な状態で時間が経過すると、合併症のリスクが高くなるからです。
子どもの2型糖尿病は歴史的に見れば最近になって出現した疾患であるため、眼科スクリーニング検査をいつから、どの程度の頻度で行うのが最適なのかが、まだ明らかになっていないです。1型であれば糖尿病発症の3~5年後から年1回程度の頻度で検査を行うことが多いようです。一方、2型の場合は、糖尿病と診断した時点から毎年検査する必要があと思われます。
原著