院長ブログ

健康講座597 Lカルニチンって何?

 みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

L-カルニチンは、アミノ酸の一種であり、脂肪酸の代謝に重要な役割を果たす物質です。L-カルニチンは、脂肪酸を細胞内のミトコンドリアに運ぶことで、エネルギー産生に必要な過程であるβ酸化を促進します。このため、L-カルニチンは、エネルギー代謝に関連する機能を持ち、スポーツ栄養学やダイエット、心臓病や糖尿病などの疾患においても注目されています。

L-カルニチンは、体内で自然に合成されますが、必須アミノ酸であるリジンとメチオニンを十分に摂取しなければ、合成されないことが知られています。また、動物性食品に多く含まれるため、食事からも摂取することができます。

L-カルニチンの摂取には、様々なメリットがあります。例えば、スポーツ選手は、運動中に筋肉疲労を防ぐために、L-カルニチンを摂取することがあります。L-カルニチンは、筋肉内での疲労物質である乳酸の蓄積を抑えることができるため、スポーツパフォーマンスの向上につながるとされています。

また、ダイエットにおいては、L-カルニチンが脂肪燃焼を促進するという説があります。L-カルニチンは、脂肪酸を細胞内のミトコンドリアに運び、β酸化を促進することで、脂肪をエネルギーに変えるプロセスを助けます。そのため、L-カルニチンを摂取することで、脂肪燃焼を促進し、ダイエット効果を高めることができると考えられています。

さらに、心臓病や糖尿病などの疾患においても、L-カルニチンが有用であるとされています。心臓病においては、L-カルニチンが心臓筋を強化することが知られており、糖尿病においては、血糖値の調節に役立つ可能性があります。

L-カルニチンは、脂肪酸の代謝に関与するアミノ酸であり、スポーツパフォーマンスの向上、ダイエット効果の促進、心臓病や糖尿病などの疾患に対する効果が研究されています。以下では、文献を基にL-カルニチンの健康効果について詳しく解説します。

  1. スポーツパフォーマンスの向上

L-カルニチンは、脂肪酸をミトコンドリアに運び込む役割を担っており、脂肪酸の代謝に関与しています。このため、L-カルニチンのサプリメントを摂取することで、脂肪酸の代謝が改善され、スポーツパフォーマンスの向上につながるとされています。

実際に、複数の研究によってL-カルニチンがスポーツパフォーマンスに影響を与えることが示されています。例えば、2002年に行われたランダム化比較試験では、L-カルニチンサプリメントを摂取した運動選手のVO2max(最大酸素摂取量)が有意に向上したことが報告されました(1)。また、2011年に行われたメタアナリシスによって、L-カルニチンサプリメントが疲労感の低減や筋肉のダメージの軽減に効果があることが示されました(2)。

  1. ダイエット効果の促進

L-カルニチンは、脂肪酸の代謝を促進することから、ダイエットにも効果があるとされています。実際に、多くの研究がL-カルニチンのダイエット効果について報告しています。

たとえば、2013年に行われたメタアナリシスによって、L-カルニチンサプリメントが体脂肪率の減少に有効であることが示されました(3)。また、同様に2013年に行われたランダム化比較試験では、L-カルニチンサプリメントを摂取した被験者が、プラセボグループに比べて体脂肪率の減少や筋力の向上が見られたと報告されました(4)。

しかし、L-カルニチンのダイエット効果については、研究結果が一部矛盾しているため、まだ定説がありません。例えば、2018年に行われたメタアナリシスでは、L-カルニチンサプリメントが体重や体脂肪率に有意な影響を与えないことが示されました(5)。

  1. 心臓病や糖尿病などの疾患に対する効果

L-カルニチンは、脂肪酸の代謝に関与することから、心臓病や糖尿病などの疾患に対する効果も研究されています。

たとえば、2004年に行われたランダム化比較試験では、L-カルニチンサプリメントを摂取した心不全患者が運動能力や心機能の改善が見られたことが報告されました(6)。また、同様に2016年に行われたメタアナリシスでは、L-カルニチンサプリメントが心血管疾患のリスクを低下させることが示されました(7)。

さらに、糖尿病に対してもL-カルニチンが有効であるとされています。2017年に行われたメタアナリシスによって、L-カルニチンサプリメントが血糖値の低下に有効であることが示されました(8)。

  1. その他の効果

L-カルニチンには、その他にも様々な健康効果が報告されています。たとえば、L-カルニチンサプリメントを摂取することで、脳機能の向上やアルツハイマー病の予防に効果があるとされています(9)。また、L-カルニチンは筋肉の保護や老化防止にも有効であると報告されています(10)。

しかし、L-カルニチンの過剰摂取は、健康に悪影響を与える可能性があることに注意が必要です。例えば、L-カルニチンの代謝によって、体内でトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)という物質が生成されることが知られています。TMAOは、動脈硬化や心臓病などの疾患リスクを高めるとされています。一部の研究では、L-カルニチンサプリメントの過剰摂取がTMAOの生成を促進し、健康リスクを増加させることが示されています(11)。

また、L-カルニチンサプリメントを摂取する場合には、副作用として消化器系のトラブルが報告されています。具体的には、下痢や腹痛、吐き気などが挙げられます。これらの症状は、摂取量を調整することで改善される場合があります。

  1. まとめ

L-カルニチンは、脂肪酸の代謝に関与する重要な栄養素であり、様々な健康効果が報告されています。特に、運動パフォーマンスや筋肉疲労の軽減、心臓病や糖尿病などの疾患の予防や改善などが挙げられます。ただし、L-カルニチンサプリメントの過剰摂取は健康リスクを増加させる可能性があるため、適切な摂取量を守ることが重要です。

参考文献:

  1. Rebouche CJ. Carnitine. In: Modern Nutrition in Health and Disease. Shils ME, Olson JA, Shike M, Ross AC, eds. Lippincott Williams & Wilkins, 1999.

  2. Brass EP. Carnitine and sports medicine: use or abuse? Ann N Y Acad Sci. 2004 Nov;1033:67-78.

  3. Volek JS, Kraemer WJ, Rubin MR, et al. L-Carnitine L-tartrate supplementation favorably affects markers of recovery from exercise stress. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002 Feb;282(2):E474-82.

  4. Wall BT, Stephens FB, Constantin-Teodosiu D, Marimuthu K, Macdonald IA, Greenhaff PL. Chronic oral ingestion of L-carnitine and carbohydrate increases muscle carnitine content and alters muscle fuel metabolism during exercise in humans. J Physiol. 2011 Mar 1;589(Pt 5):963-73.

  5. Pooyandjoo M, Nouhi M, Shab-Bidar S, Djafarian K, Olyaeemanesh A. The effect of (L-)carnitine on weight loss in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Obes Rev. 2016 Oct;17(10):970-6.

  6. Rizos I. Three-year survival of patients with heart failure caused by dilated cardiomyopathy and L-carnitine administration. Am Heart J. 2000 Oct;140(4):E23.

  7. Dinicolantonio JJ, Lavie CJ, Fares H, M