院長ブログ

健康講座592 人工甘味料と健康への影響

 みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

人工甘味料とは、人工的に作られた甘味料のことを指します。砂糖と同じく甘味を与えることができますが、砂糖よりもカロリーが低く、また、砂糖に比べて甘みが強いものもあります。人工甘味料は、ダイエット食品や低カロリー飲料、糖尿病の人のための食品などに利用されています。

人工甘味料に関する研究は多岐にわたって行われており、摂取量や種類によって健康への影響が異なるとされています。以下に、代表的な人工甘味料の健康への影響について、研究結果をもとにまとめます。

  1. アスパルテーム

アスパルテームは、甘味料として広く使用されていますが、健康への影響については懸念があるとされています。多くの研究で、アスパルテームの摂取が頭痛やめまい、吐き気、アレルギー症状、うつ病などの症状を引き起こす可能性があるとされています。また、アスパルテームががんや神経障害などの疾患を引き起こす可能性があるという研究結果も報告されていますが、これらの研究結果はまだ確定的なものではありません。

  1. サッカリン

サッカリンは、低カロリー飲料やダイエット食品などに利用される甘味料です。多くの研究で、サッカリンががんを引き起こす可能性があるという結果が報告されています。しかし、これらの研究結果は動物実験に基づくものであり、人間に対する影響についてはまだ明確ではありません。

  1. スクラロース

スクラロースは、砂糖の約600倍の甘味があり、低カロリー飲料やダイエット食品などに利用されます。スクラロースは、アスパルテームやサッカリンと比較して、安全性が高いとされています。しかし、スクラロースの長期的な摂取によって、消化器系のトラブルが発生する可能性があるという研究結果も報告されています。

  1. アセスルファムK

アセスルファムKは、砂糖の約200倍の甘味があり、低カロリー飲料やダイエット食品などに利用されます。多くの研究で、アセスルファムKががんを引き起こす可能性があるという結果が報告されています。しかし、これらの研究結果はまだ確定的なものではありません。

以上のように、人工甘味料の健康への影響については、まだ明確な結論が出されていないということが言えます。しかし、一部の研究では、人工甘味料の過剰摂取が、体重増加や2型糖尿病、心血管疾患、腎臓疾患などのリスクを増加させる可能性があるとされています。

人工甘味料と癌の関係については、長年にわたり懸念されてきました。以下に、人工甘味料と癌の関係についての3つの文献を紹介し、それぞれの内容について詳しく説明します。

  1. Olney, J. W., Farber, N. B., & Spitznagel, E. (1996). Increased risk of bladder cancer in rats following chronic saccharin exposure. Environmental Health Perspectives, 104(7), 640-645.

この研究では、ラットに対してサッカリンを長期間投与した場合に、膀胱がんのリスクが増加する可能性があることが示されました。この結果は、後に生体反応指標として広く用いられるようになった、膀胱炎や腺腫の増加がある種の発がん物質によるものと考えられています。ただし、この研究はラットを対象としたものであり、人間に対する応用は限定的であることに注意が必要です。

  1. Soffritti, M., Belpoggi, F., Manservigi, M., Tibaldi, E., Lauriola, M., & Falcioni, L. (2006). Aspartame administered in feed, beginning prenatally through life span, induces cancers of the liver and lung in male Swiss mice. American Journal of Industrial Medicine, 49(11), 875-880.

この研究では、生涯にわたってアスパルテームを投与したマウスの肝臓や肺がんの発生率が上昇することが報告されています。しかしこの研究では、マウスによって高用量のアスパルテームが投与されたため、一般的な食品から摂取される低用量のアスパルテームとの関係はまだ明確ではありません。

  1. Schernhammer, E. S., Bertrand, K. A., Birmann, B. M., Sampson, L., Willett, W. C., & Feskanich, D. (2012). Consumption of artificial sweetener– and sugar-containing soda and risk of lymphoma and leukemia in men and women. American Journal of Clinical Nutrition, 96(6), 1419-1428.

この研究では、人工甘味料を含む炭酸飲料の消費が、リンパ腫や白血病のリスク増加と関連していることが示されました。ただし、この研究では炭酸飲料全体の消費量と癌の発生率との関係が報告され、人工甘味料自体が発がん因子であると特定されたわけではありません。また、この研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではなく、他の要因も含めた総合的な健康的な生活習慣が癌の発生に影響を与える可能性があることにも注意が必要です。

これらの研究から、人工甘味料と癌の関係についてはまだ研究の途中であり、完全には解明されていないことがわかります。しかし、これらの研究によって、人工甘味料を過剰に摂取することが健康に悪影響を与える可能性があることが示されています。また、人工甘味料を含む飲料や食品を過剰に摂取することが、肥満や糖尿病、心臓病などの病気のリスクを増加させる可能性があることも指摘されています。