院長ブログ

健康講座590 食後低血糖

みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

 食後低血糖(postprandial hypoglycemia)とは、食後に血糖値が急激に上がった後、急激に下がり、正常範囲以下になる状態を指します。一般的に、血糖値が60mg/dL以下に下がる場合に食後低血糖と診断されます。

食後低血糖は、消化吸収が遅い食品や低GI値の食品を摂取することによって引き起こされることがあります。これは、食後の血糖値の上昇が緩やかで、膵臓から分泌されるインスリンも徐々に分泌されるため、急激な血糖値の上昇が抑えられ、低血糖を引き起こすことが少なくなるからです。

一方、GI値が高い食品を摂取すると、血糖値の急激な上昇が起こります。これにより、過剰なインスリンの分泌が引き起こされ、血糖値が急激に下がってしまう場合があります。このような食後低血糖は、糖尿病やインスリン分泌過剰症などの疾患によって引き起こされることがあります。

食後低血糖の症状には、めまい、頭痛、手足の震え、倦怠感、不安感、多汗症、意識障害などがあります。重症化すると、意識を失うことがあるため、注意が必要です。

治療には、血糖値を安定させるために、低GI値の食品を中心にしたバランスの良い食事を摂取することが重要です。また、運動やストレスの管理なども併せて行うことが効果的です。一方、薬物治療が必要な場合は、医師の指導の下で行う必要があります。

まとめると、食後低血糖は、消化吸収が遅い食品や低GI値の食品を中心としたバランスの良い食事で予防することができます。また、運動やストレスの管理も併せて行い、必要に応じて薬物治療を行うことが重要です。


文献1:Elsakr JM, & Garg SK. (2020). Postprandial hypoglycemia. StatPearls [Internet].

Elsakr JM, & Garg SK.(2020)は、消化器系障害、血糖値の急激な上昇、膵臓機能障害などが原因で発生する食後低血糖について述べた総説です。食後低血糖は、糖尿病やインスリン分泌過剰症、胃バイパス手術などの疾患によって引き起こされることが多いとされています。本総説では、これらの疾患によって引き起こされる食後低血糖の症状、診断、治療について詳しく説明されています。

食後低血糖の症状には、めまい、頭痛、手足の震え、倦怠感、不安感、多汗症、意識障害などがあります。診断には、経験的な方法(症状の発生時期や食事内容の記録など)や、食後低血糖を惹起する条件の再現試験が用いられます。治療には、低GI値の食品を中心としたバランスの良い食事、運動、ストレス管理が含まれます。必要に応じて薬物療法も行われます。

文献2:Cryer PE. (2007). Hypoglycemia, functional brain failure, and brain death. Journal of Clinical Investigation, 117(4), 868-870.

Cryer PE.(2007)は、低血糖が脳機能障害につながる可能性があることについて報告しています。脳は、グルコースを唯一のエネルギー源として使用しており、血糖値が低下すると、脳機能障害が引き起こされる可能性があります。この総説では、低血糖が脳機能障害を引き起こす仕組みや、検査、治療について説明されています。

低血糖による脳機能障害は、軽度の集中力低下から意識混濁状態、昏睡、最悪の場合は脳死に至ることがあります。このため、低血糖の診断や治療は重要です。低血糖の診断には、糖負荷試験、低血糖症状発現時の血糖値の測定、および低血糖の発生時期と症状の関連性などがあります。治療には、低GI値の食品を選び、食事を分散させることが重要です。また、低血糖を引き起こす原因に応じて、薬物療法や手術が必要な場合があります。

文献3:Rigalleau V, Blanchetier V, Combe C, & Gin H. (2001). Postprandial hypoglycemia after gastric bypass surgery. Diabetes Care, 24(7), 1391-1392.

Rigalleau V, Blanchetier V, Combe C, & Gin H.(2001)は、胃バイパス手術後の食後低血糖について報告しています。胃バイパス手術は、肥満治療のために行われる手術の一つで、消化管を短縮し、食物の吸収を制限することで体重を減らすことを目的としています。しかし、手術後に食後低血糖が発生することがあります。本論文では、胃バイパス手術後の食後低血糖の原因、症状、診断、および治療について説明されています。

胃バイパス手術後の食後低血糖は、通常、糖質摂取後2〜3時間以内に発生します。症状には、めまい、倦怠感、意識障害などがあります。診断には、症状と低血糖値の測定、および経験的な方法(症状の発生時期や食事内容の記録など)が用いられます。治療には、低GI値の食品を中心としたバランスの良い食事、運動、ストレス管理が含まれます。必要に応じて薬物療法も行われます。

まとめると、食後低血糖は、さまざまな疾患や手術によって引き起こされることがあります。食後低血糖の症状や原因、診断、治療については、それぞれの文献が示すように、詳しく研究されています。食後低血糖の予防には、適切な食事管理が不可欠であり、低GI値の食品を選び、食事を分散させることが重要です。また、糖尿病患者や胃バイパス手術後の患者には、特に注意が必要です。適切な診断と治療が必要な場合があります。

以上のように、食後低血糖は、疾患や手術などの原因によって引き起こされることがあります。食後低血糖の原因、症状、診断、および治療については、文献によって詳しく研究されています。適切な食事管理、薬物療法、および手術が必要な場合があります。食後低血糖を予防するためには、低GI値の食品を中心としたバランスの良い食事、運動、ストレス管理が重要です。糖尿病患者や胃バイパス手術後の患者には、特に注意が必要です。