院長ブログ

健康講座719 養生訓と現代医学

 みなさん、こんにちは。小川糖尿病内科クリニックです。今日は古代の養生の教えと現代医学との関連性についてお話したいと思います。特に、明の時代の文学者、楊慎の「養生訓」を取り上げ、その中のアドバイスが現代の医学研究とどのように一致しているかを見ていきましょう。

まず、「養生訓」について少し説明します。「養生訓」は、身体と心の健康を重視し、適度な飲食、適切な休息と運動による健康維持を説いた散文です。楊慎は、「飲食有恆,起居有時」(飲食は規則正しく、生活は規律を持つべき)と述べており、これは現代医学が説く健康維持の基本的な原則と一致しています。

飲食に関して言えば、現代の栄養学でもバランスの良い食事と規則正しい食事時間が推奨されています。例えば、Potter, M.らによる2018年の研究では、規則正しい食事がインスリン感受性や脂質プロファイルに良い影響を与えることが示されています。これは楊慎が述べた「飲食有恆」の理念と一致します。

また、起居についても現代医学は同じく重要性を認めています。睡眠は身体機能の修復や記憶の固定化、情緒の安定に不可欠で、これは「起居有時」という言葉で表現されています。Walker, M.の2017年の著書「Why We Sleep: The New Science of Sleep and Dreams」では、十分な睡眠が生命活動にとって重要であると説明されています。

さらに、「養生訓」では、身体の健康を維持することが道徳や知識を追求するための重要な基盤であると主張されています。これは、現代医学でも身体の健康と精神の健康が相互に影響し合うという観点と一致します。精神的な健康が身体の健康に重要な影響を及ぼすことが、World Health Organizationの2004年の報告書「Promoting Mental Health: Concepts, Emerging Evidence, Practice」で強調されています。

以上から、楊慎の「養生訓」が述べる健康維持の方法や理念は、現代の医学研究と多くの部分で一致し、その有効性が証明されています。しかし、「養生訓」は単に健康について語るだけではなく、健康が人生全体、特に道徳や知識の追求における重要な役割を強調しています。

我々がこれらの教えを現代の生活に取り入れることで、より健康的で満足のいく生活を送ることが可能になります。そして、それは現代医学の目指すところとも一致します。ここで、私たちは身体と心の健康を重視し、自己の健康管理に対する意識を高めることが求められます。

この点において、「養生訓」は古代の知恵を私たち現代人に提供し、私たちの生活を豊かで健康的なものにする助けとなります。そして、それは現代医学の目標、すなわち人々の健康を維持し向上させるという目標とも完全に一致します。

最後に、「養生訓」が提供する健康的な生活の理念と現代医学の目指すところが同じであることを再確認するとともに、楊慎が主張したように、「身体髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝之始也」(身体と髪の毛は親から受け継いだもので、損なってはならない。これが孝行の始まりである)という儒家の教えを思い出すことが重要です。これは身体を大切にするというシンプルで普遍的なメッセージであり、私たちが健康を維持し、幸せな生活を送るための道しるべとなるでしょう。