院長ブログ

健康講座714 ”心と体を喜ばせる!カカオ70%以上ダークチョコレートのパワー”

 いつもありがとうございます。小川糖尿病内科クリニックです。

 今日は、近年の研究により健康への恩恵が注目されているチョコレートについてお話ししようと思います。その主成分であるカカオには、抗酸化作用、抗凝固作用、抗炎症作用などをもたらすフラバノールが豊富に含まれており、これらが心血管疾患などへの予防効果をもたらすと考えられています。

1. ダークチョコレート摂取による血圧低下

ダークチョコレートが血圧を下げる効果があることが、2007年にJAMA誌で報告されました[1]。これは小規模なランダム化比較試験で、毎日6.3g(30kcal)のダークチョコレートを摂取すると、18週間で収縮期血圧が平均2.9mmHg、拡張期血圧が1.9mmHg下がることが示されました。また、同じ量のホワイトチョコレートを摂取した群と比較して、ダークチョコレート摂取群の高血圧有病率は18%減少しました。

2. チョコレート摂取量と心血管疾患リスクの関連

2011年のBMJ誌に、チョコレートの摂取量と心血管疾患リスクとの関連についてのメタアナリシスが発表されました[2]。このメタアナリシスでは、チョコレートの摂取量が多い人ほど心血管疾患リスクが低いことが示されています。具体的には、チョコレート摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて、全心血管疾患リスクが37%低下し、脳卒中リスクが29%低下しました。

3. チョコレート摂取と脳卒中リスクの関連

2012年にNeurology誌に掲載されたスウェーデンのコホート研究によれば、チョコレートの摂取量が多い男性では脳卒中のリスクが17%低かったと報告されています[3]。この研究では、チョコレートの摂取量と脳卒中リスクとの関連を調べるために、49歳から75歳までのスウェーデン人男性3万7,103人を約10年間追跡しました。その結果、チョコレートの摂取量が最も多い群(週平均62.9g)は、最も少ない群(週平均0g)と比べて脳卒中のリスクが17%低下していました。

更に、これらのコホート研究を含む5件の研究を組み合わせたメタ解析では、最も多くチョコレートを摂取している群の脳卒中リスクは全く食べない群に比べて19%低かったことが明らかにされました。これらの結果を基に、週に50gのチョコレートを摂取することで脳卒中リスクが約14%低下すると試算されています。

4. チョコレート摂取頻度とBMIとの関連

チョコレートを頻繁に摂取するとBMIが低くなる可能性があるという研究結果が、2012年のArch Intern Med誌で報告されました[4]。この研究では、心血管疾患や糖尿病、高LDL-C血症の既往がない20歳から85歳までの男女を対象に、チョコレートの摂取頻度とBMIとの関連を調査しました。その結果、チョコレートの摂取頻度が高いほどBMIが低いという結果が得られました。

5. チョコレート摂取と糖尿病リスクの関連

日本の岐阜県高山市で実施されたコホート研究では、チョコレートの摂取頻度が1週間に1回以上の男性は糖尿病発症リスクが35%低下していました[5]。しかし、女性については糖尿病発症リスクの有意な低下は認められませんでした。

これらの研究から見えてくるのは、チョコレート、特にダークチョコレートが健康に対して一定の良好な効果を持つ可能性があるということです。しかし、チョコレートには砂糖や脂肪も多く含まれているため、摂取量は適度に制限することが重要です。特に、摂取するチョコレートの種類にも注意が必要で、研究で健康効果が見られたのはカカオ含有率の高いダークチョコレートが中心です。ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは、カカオの量が少なく砂糖や脂肪の含有量が高いため、これらの種類のチョコレートを多量に摂取することは推奨されません。

また、これらの研究結果は相関関係を示すものであり、チョコレートがこれらの疾患の直接的な原因や解決策であるとは言えません。研究者たちはこれらの結果を解釈する際に、その他の要素、例えば参加者の生活習慣や食事習慣、運動習慣等を考慮に入れています。例えば、チョコレートを頻繁に摂取する人々は、他の健康的な食事を摂る傾向があるかもしれません。また、彼らは適度な運動をするか、または全体的に健康的な生活を送っているかもしれません。これらの要素が結果に影響を与えている可能性もあるため、注意が必要です。

さらに、これらの研究結果が全ての人々に適用できるわけではないことも留意が必要です。例えば、糖尿病リスクの低下が見られた日本の研究では、男性のみで有意な結果が見られ、女性では有意な結果が得られませんでした。これは、性別、年齢、遺伝的要素、生活習慣など、個々の差が健康への影響を左右する可能性を示しています。

参考文献:

  1. Taubert D, Roesen R, Lehmann C, Jung N, Schömig E. Effects of low habitual cocoa intake on blood pressure and bioactive nitric oxide: a randomized controlled trial. JAMA. 2007;298(1):49-60.

  2. Buitrago-Lopez A, Sanderson J, Johnson L, et al. Chocolate consumption and cardiometabolic disorders: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2011;343:d4488.

  3. Larsson SC, Virtamo J, Wolk A. Chocolate consumption and risk of stroke: a prospective cohort of men and pooled analysis of existing studies. Neurology. 2012;79(12):1223-9.

  4. Golomb BA, Koperski S, White HL. Association between more frequent chocolate consumption and lower body mass index. Arch Intern Med. 2012;172(6):519-21.

  5. Yokoyama Y, Nishimura K, Barnard ND, et al. Vegetarian diets and glycemic control in diabetes: a systematic review and meta-analysis. Cardiovasc Diagn Ther. 2014;4(5):373-382.