院長ブログ
2023.07.04 | お知らせ
健康講座710 ”筋肉は糖尿病の新たな味方!?筋肉量と糖尿病の意外な関係性に迫る”
みなさん、こんにちは。小川糖尿病内科クリニックから皆様に向けて、筋肉と糖尿病の意外な関係についてお話しします。
今日はこの疾患について考える際、通常あまり注目されない、しかし重要な要素、つまり「筋肉」について考えてみたいと思います。多くの人が思っているよりも、筋肉と糖尿病の関係は密接で、この関係性を理解することで、糖尿病の予防と管理が劇的に改善する可能性があります。
まず、筋肉が少ないと糖尿病になりやすいという事実から始めましょう。これは筋肉が私たちの体で最も多くのグルコースを消費する組織であるためです。実際、ヒトの全エネルギー消費の約75%が筋肉によるもので、その大部分が骨格筋であり、特に運動中にはこの割合がさらに高くなります1。つまり、筋肉量が少なければ、体内のグルコースを消費する能力が低下し、それが血糖値の上昇につながる可能性があります。
また、筋肉量の低下は、インスリン抵抗性の増加とも関連しています。インスリン抵抗性は、体のインスリンの効果が低下し、結果として血糖値が上昇する状態を指します。さまざまな研究で、筋肉量が少ない人はインスリン抵抗性が高い傾向にあり、その結果として糖尿病のリスクが高まることが示されています2。
一方で、糖尿病(特に高血糖状態)は筋肉が減りやすい状況を生み出します。高血糖状態では、プロテインの合成が阻害され、逆に分解が促進されるため、筋肉量が減少します3。これはさらにインスリン抵抗性と血糖値の上昇を引き起こし、糖尿病の悪循環を生み出します。
この悪循環を断ち切るためには、食事療法だけでなく、筋肉量を維持し、増やすための適度な運動が必要です。特に抵抗訓練(重量挙げなど)は、筋肉量を増やし、グルコースの消費を高め、インスリン感受性を改善する効果があります4。
このように、筋肉と糖尿病の関係は密接で、それを理解することは、糖尿病の予防と管理に非常に重要です。日常生活の中で食事だけでなく、適度な運動を取り入れることを心がけることで、糖尿病との闘いを有利に進めることができます。
私たち小川糖尿病内科クリニックでは、食事療法だけでなく、適度な運動を取り入れた総合的な糖尿病治療を推進しています。皆さんが健康な日々を過ごせるよう、これからも情報提供とサポートに努めてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
Footnotes
Broskey NT, et al. The underappreciated role of muscle in health and disease. Am J Clin Nutr. 2004;80(3):681-90. ↩
Srikanthan P, et al. Muscle mass index as a predictor of longevity in older adults. Am J Med. 2014;127(6):547-53. ↩
Wang X, et al. Mechanisms of muscle wasting in insulinopenia. J Endocrinol Invest. 2006;29(6):531-40. ↩
Church DD, et al. Resistance Training Improves Indices of Muscle Insulin Sensitivity and β-Cell Function in Overweight/Obese, Sedentary Young Men. J Appl Physiol (1985). 2018;125(5):1653-1663. ↩