院長ブログ

健康講座 774 「糖尿病と中性脂肪:心臓病リスクを減らす戦略」

 皆さん、こんにちは。小川糖尿病内科クリニックの院長です。今日は、糖尿病患者の健康管理における重要な側面、特に中性脂肪とその管理についてお話しします。


私たちは通常、脂質異常症と聞くとコレステロールの数値に注目しがちですが、中性脂肪も非常に重要です。中性脂肪の値が高いと、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることが知られています。特に非空腹時の中性脂肪値の上昇は、これらのリスクを高めます。

糖尿病患者の場合、食事や運動などの生活スタイルの改善、及び糖尿病の治療に早期に取り組むことで、中性脂肪の値が大幅に低下することが分かっています。これは、心筋梗塞などの心臓病のリスクを減少させる大きな一歩です。

血液中の中性脂肪は、食事によって影響を受けます。日本では、中性脂肪の基準が「空腹時150mg/dL」から「非空腹時175mg/dL」という新しい基準に変更されました。これは、食後の中性脂肪値が高い場合、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることを示しています。

脂質異常症は、血液検査によって診断されます。主なチェック項目は、悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、そして中性脂肪の値です。糖尿病患者の場合、これらの値を適切に管理することが非常に重要です。

さらに、米国内分泌学会の研究によると、糖尿病患者が食事や運動などの生活スタイルを改善することで、心筋梗塞などの心臓病のリスクが減少することが示されています。

この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の糖尿病予防プログラムの一環として行われました。耐糖能異常のある1,645人を対象にした無作為化臨床試験で、生活スタイルの改善やメトホルミンによる薬物療法が血中脂質にどのような変化をもたらすかを調べました。

結果として、生活スタイル改善プログラムに参加したグループは、1年後に中性脂肪の値が大幅に低下しました。また、生活スタイル改善と薬物療法の両方に取り組んだグループでは、悪玉のLDLコレステロールの値も低下し、善玉のHDLコレステロールの値は上昇しました。

私たちは、中性脂肪を低下させるために健康的な食事や運動、体重管理に取り組むことが非常に重要です。過去30年間に発表された500件以上の研究を分析した結果、中性脂肪を下げるために次のような生活スタイルが勧められます。

  • 糖質をとりすぎないようにする
  • フルクトースをとりすぎないようにする
  • 飽和脂肪酸を1日のエネルギー摂取量の7%以下に抑える
  • トランス脂肪酸をとらないようにする
  • アルコールを飲みすぎないようにする
  • 活発なウォーキングなどの運動を週に150分行う
  • 健康的な体重を維持する

これらの取り組みにより、中性脂肪を20~50%と大幅に下げることができます。中性脂肪値は、空腹時だけでなく、非空腹時にも検査をすることが大切です。

米国の成人の約3分の1が、中性脂肪値が150mg/dL以上であり、特に若い世代でも中性脂肪値が上昇していることが示されています。これは、若い世代でも2型糖尿病や肥満が増えていることが反映されていると言えます。