院長ブログ

健康講座95~小児の過体重は成人までに減らせば糖尿病は避けられる?

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

小児期の過体重は2型糖尿病のリスク
 ヒトの脂肪細胞数は小児期に増加し、20歳以降は肥満者でも非肥満者でも脂肪細胞の数はほとんど変化しない(Spalding KL, et al. Nature. 2008;453:783-787. )。そのため、小児期の過体重は、成人期以降に過食や運動不足により脂肪細胞のサイズが増大した場合に、アディポネクチンなどの「善玉」アディポサイトカイン(アディポカイン)の低下をきたし、糖尿病を発症しやすくなる。日本における小児肥満の割合は2006年頃から減少傾向にあり、2015年度の学校保健統計調査によれば11歳時において肥満傾向にあるものは男児で9.87%、女児で7.92%である。一方、欧米諸国では小児の23%が過体重ないしは肥満と報告されており(Ng M, et al. Lancet. 2014;384:766-781. )、小児期の過体重が成人後の糖尿病リスクとして重要視されている。


小児期・思春期の過体重は成人期までに解消することで2型糖尿病の発症リスクが低下
 今回の報告は、デンマーク人男性6万人余りを対象とするコホート研究で、小児期から成人期にかけての体重の変化が2型糖尿病の発症リスクとどのように関連しているのかについて検討されている。


思春期以前の過体重の解消が重要
 7歳時に過体重であったものの64.4%は過体重を解消しており、過体重が解消された場合には2型糖尿病の発症リスクが過体重の既往がない場合と同程度となり、小児期の過体重の影響が可逆的であることが示唆されている。一方、7歳時に標準体重であっても、7歳以降、成人早期にかけてBMIが増加した場合には2型糖尿病の発症リスクが増加することも示されている。

 7歳時における過体重が2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響は、思春期までに過体重を解消し、成人早期まで標準体重を維持することで軽減されるが、13歳時における過体重の影響は部分的にしか解消されない。思春期における過体重は中高年期以降に2型糖尿病を発症するリスクを増大させることを勘案すると、思春期以前に過体重を解消することがきわめて重要であることを示唆する臨床データといえる。