院長ブログ

健康講座233 食事とGLP1

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。


 糖尿病食事療法の基本は個別的に適正な総エネルギー量と栄養バランスである。食事の時刻、摂食速度、食べる順序などを実践することも大切で、GLP-1と食事療法の深い関わりがあるようでございます。

 GLP-1には、インスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制以外にも、脂肪分解や脂肪肝の減少を促進したり、心機能を保護したりする効果があるのです。また、SGLT2阻害薬とは異なり、GLP-1は骨格筋における筋組織の血流増加やGLUT4の発現増加を促し、脂肪異化は促進するものの筋肉異化は起こさない。難しくなりましたが、要するにですよ、脂肪は落としたいけど筋肉は維持させたいときに効果が期待できるのでございます。

GLP-1の分泌を促す食事とは?
 GLP-1は小腸下部のL細胞と呼ばれる細胞に存在し、ブドウ糖やタンパク質、脂肪など様々な食事成分の刺激を受けて分泌が促されるものであり、普通に食事をとっても分泌されます。地中海式料理はオリーブオイル、魚介類、全粒穀物、ナッツ、ワインなどを多く含むのが特徴的で、これらには1)一価飽和脂肪酸、2)多価不飽和脂肪酸、3)食物繊維が豊富であります。上記3つの栄養素を多く含み、さらに、GLP-1の分泌を高める食事でもあります。

朝食がGLP-1分泌に重要
 インスリンの働きを妨害する因子である遊離脂肪酸(FFA:free fatty acid)は朝食前に最も高値を示します。そのため、朝食後は血糖値も上昇する。しかし、2回目の食事となる(1日3食きちんと食べている場合)昼食時には、朝食後に追加分泌されたインスリンのおかげで遊離脂肪酸:FFAが低下し、インスリンの効きが良くなっているため、食後血糖値の上昇が抑えられるのです。ところが、朝食をとらずに昼食をとると、遊離脂肪酸:FFAは高値のままであるため、食後血糖値が上昇してしまうのです。また、糖尿病患者の多くはインスリン分泌速度が遅いが、朝に分泌されたGLP-1が昼食時のインスリン分泌速度を高めるという研究結果もあります。つまり、朝食の摂取が昼食前と夕食前のGLP-1濃度を上昇させ、昼食後、夕食後のインスリン分泌も速める。したがって、昼食後と夕食後の血糖値改善のためにも朝食をとるのは重要であるのでございます。

GLP-1濃度と朝食後の血糖上昇抑制の関係
 朝食をとることで昼食前と夕食前のGLP-1濃度がかさ上げされることは前述の通りであります。ここで“朝食前の時点からすでにGLP-1が高ければさらに有利では?”という疑問が湧いてこないでしょうか?朝食後の血糖改善には乳清タンパク(whey protein)が効果的であるという報告があります。乳清タンパクは牛乳内に20%程度含まれている物質で、これをSU剤もしくはメトホルミン服用中の2型糖尿病患者を対して、朝食30分前に50g投与したところ、朝食前からインスリンや活性型GLP-1の分泌量が上昇して血糖が改善したようでございます。また、ほかの試験報告からは、朝食中より朝食前の摂取が効果的であることも明らかになったのでございます。

 ほかにも、『もち米玄米』などの全粒穀物を日々の食事に取り入れることも朝食前のGLP-1を上昇させる可能性があるということでございます。

 最後に、食事療法の基本は適正なエネルギー量と適正な栄養素のバランスであるが、GLP-1など体内ホルモンの分泌量をより増加させることも重要と考えられます。その意味でも朝食をしっかり摂取することが、昼食・夕食時の血糖上昇に影響を及ぼし、1日の血糖改善につながるのではないかと考えられます。
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