院長ブログ
2021.08.18 | お知らせ
健康講座219 新型コロナウイルス Delta株って何⁉
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
思い返せば、2019年12月末に中国・武漢で新型コロナ感染症が発生したのでうね。これを、武漢原株(第1世代)と定義するようです。ウイルスは常に変異を繰り返し、2020年2月下旬には第2世代が発生しました。これはさらに変異を繰り返し、、2020年の秋以降、コロナ感染症は第2世代から第3世代変異株の時代に突入したのでございます。WHOは、第3世代の変異株にあってAlpha株(英国株:B.1.1.7)、Beta株(南アフリカ株:B.1.351)、Gamma株(ブラジル株:P.1)、Delta株(インド株:B.1.617.2)の4種類をVOC(Variants of Concern)と定義したのです。
Alpha株は2020年9月以降、Beta株は2020年11月以降、Gamma株は2020年12月以降に世界的播種が始まりました。インド株は2020年10月にインドにおいて初めて検出され、2021年4月末以降、インド株も世界に播種している。
Delta株の一部が強力な免疫回避作用を発現するようです。Delta株は今の尚変異/進化を続けております。2021年5月以降、Alpha株からDelta株への置換が進行し、2021年7月20日現在、インド、英国、米国、南アフリカ、ロシア、中国など世界の多くの国/地域で直近1ヵ月における新型コロナ感染の75%をDelta株が占めるようになっているようでございます。本国にあっては、3月初旬より第2世代から第3世代のAlpha株への置換が始まり、5月末には感染ウイルスの85%をAlpha株が占めるようになったようです。しかしながら、6月初旬よりAlpha株感染の低下が始まり、7月中旬にはDelta株感染が新規感染の50%に達するものと予測されています。6月にて、関東圏においては新規感染者の30%、関西圏においては新規感染者の5%がDelta株に起因すると推定されています。
論文では、Pfizer社ならびにAstraZeneca社のワクチンのAlpha株、Delta株に対する発症/重症化予防効果を解析したものがあります。解析終了時点でのワクチン2回のワクチン接種終了は65歳以上の高齢者で88.8%、国民全体で39.4%であり、Alpha株感染の75%、Delta株感染の70%はワクチン非接種者に認められた。ワクチンの発症予防効果はAlpha株に対して73-92%、Delta株に対して60-79%で両ワクチンともDelta株に対する予防効果が有意に減弱していることが示されました。
論文で明らかにされた内容として、Alpha株、Beta株では発生から75%の感染率に達するまでには約3ヵ月の期間を要するのに対し、Delta株では約1ヵ月で75%の感染率に達する。一方、Gamma株では約6ヵ月を要して75%の感染率に達する。
Delta株感染時、ウイルス感染からPCRが陽性になるまでの潜伏期間は6日から4日に短縮されるようです。その結果、従来に比べ、Delta株感染では一般的入院リスクが1.2倍、ICU入院リスクが2.9倍、死亡リスクが1.4倍上昇すると報告されているのでございます。別の論文では、従来株感染に比べてDelta株感染ではウイルス陽性期間が長く、肺炎発症リスクが1.9倍、ICU入院/死亡リスクが4.9倍に達すると報告されたのです。
Delta株感染の年齢分布、性差の影響に関する確実な報告は現時点ではまだ存在しないようです。これは、ワクチン接種という要因が加わったためにDelta株の自然感染時のデータ集積が困難になっているためでもあります。Delta株の感染性、病原性は野生株/従来株、Alpha株より強いものであることは間違いないですが、それに対して年齢、性差が影響するという科学的根拠はないので現実でございます。Delta株感染者数は、小児、高齢者で少なく、活動度の高い20~50代で多い可能性だってあるのです。
日々変化する状況が延々と続く日々に嫌気がするのは心より同意します。その中で、根拠のない情報の踊らされず、批判的吟味をもって向き合って頂ければ幸いです。
参考
Meredith LW, et al. Lancet Infect Dis.2021;20:1263-1271.
Weekly epidemiological update on COVID-19. WHO. 2021 May 11.
B.1.617.2のSublineage、Tracking SARS-CoV-2 Variants. WHO. 2021 July 18.
Weekly epidemiological update on COVID-19. WHO. 2021 July 20.
Li B, et al. medRxiv. 2021;2021.07.07.21260122.
Fishman DN, Tuite AR. medRxiv. 2021;2021.07.05.21260050.