院長ブログ

健康講座594 バージャー病って何?

みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

 バージャー病(Buerger’s disease)は、末梢動脈疾患の一種であり、小さな血管や動脈が炎症を起こし、狭くなって血流が妨げられる病気です。主に喫煙者に見られ、若い男性に多く発生します。

バージャー病の主な症状は、手足の疼痛、しびれ、または痺れ感です。特に足の疼痛は、歩行後に強く現れ、しばしば夜間にも発生することがあります。また、皮膚に赤い斑点や水ぶくれができ、指や足の先が紫色になることもあります。

バージャー病は、主に喫煙者に見られる疾患で、末梢の動脈が炎症を起こし、閉塞してしまうことで発症します。以下に、バージャー病の代表的な症状をさらに詳しく説明します。

  1. しびれや痛み

バージャー病の代表的な症状は、下肢のしびれや痛みです。しばしば、指先から足首にかけての部分で感じられます。初期には運動時に痛みが発生し、休止すると消える傾向がありますが、病状が進行すると常時痛みが発生し、歩行障害や生活の質の低下を引き起こします。

  1. 冷感

バージャー病患者は、足や手の指先が冷たく感じられることがあります。これは、血管の炎症や閉塞により、血液が正常に循環していないためです。このため、冷えやすい環境下において、症状が悪化することがあります。

  1. 色素沈着

バージャー病患者は、足や手の指先が紫色や褐色に変色することがあります。これは、血管が閉塞して酸素や栄養素が供給されないことにより、組織が壊死し、色素沈着が起こるためです。

  1. 潰瘍

バージャー病患者は、足や手の指先に潰瘍が生じることがあります。これは、血管の閉塞により、組織が壊死し、潰瘍が形成されるためです。潰瘍は、感染症や壊死が進行することで深刻化するため、早期治療が必要です。

  1. 関節痛

バージャー病患者は、関節痛を訴えることがあります。これは、血管の炎症が関節に影響を与えることで起こります。また、患者が足を冷やすことで症状が悪化することがあります。

喫煙はバージャー病の発症に重要な役割を果たしています。タバコに含まれる有害物質が血管を収縮させ、炎症を引き起こすことが原因と考えられています。喫煙を続けると、病気が進行し、手足の壊死や切断を引き起こす可能性があります。そのため、バージャー病の治療においては、まず喫煙を中止することが重要な治療の一環となります。

バージャー病の治療には、血管拡張剤、抗炎症剤、血栓溶解剤などが使用されます。重症の場合は手術も必要となることがあります。しかし、病気の進行を防ぐためには、喫煙の中止が最も重要な治療となります。

  1. 「Buerger’s disease: a review」(作者:Fazeli, B., Ravari, H., & Seyedpour, S. M.)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6147454/

この文献では、バージャー病の病態について詳しく解説されています。バージャー病は、血管内皮細胞の損傷による血管の炎症から始まり、血管壁の線維芽細胞や平滑筋細胞、炎症細胞の浸潤によって血管壁の線維化が進行し、血管が狭くなります。狭くなった血管は血液の流れが悪くなり、組織の酸素・栄養供給が悪化して壊死を引き起こすことがあります。

この文献では、バージャー病の発症には喫煙が関与していることが指摘されています。喫煙は、血管を収縮させることで血流を妨げ、さらにタバコの有害成分が血管を損傷させるためです。また、免疫系の異常や遺伝的な要因もバージャー病の発症に関連していると考えられています。

バージャー病の治療には、喫煙の中止が最も重要な治療法であり、血管拡張剤や抗炎症剤、血栓溶解剤などが用いられます。症状が進行した場合は手術が必要となることもあります。

  1. 「Epidemiology, Clinical Characteristics, and Diagnosis of Buerger Disease」(作者:Ibrahim, R. N., Hassan, M. Y., & Hamdan, F. B.)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7173598/

この文献では、バージャー病の病態とともに、疫学的特徴や臨床的特徴、診断方法について解説されています。

バージャー病は、主に若い男性に見られ、喫煙者に多く発症します。疫学的特徴として、アジア人や東欧人に多く見られる傾向があります。また、喫煙者以外でも、スモークレスタバコや水タバコの使用がリスク因子となることが報告されています。

臨床的特徴としては、下肢を中心に、足の痛みや皮膚の潰瘍、壊死などがみられます。また、冷感や知覚障害、肢体の色素沈着などもみられます。症状の進行によっては、下肢切断が必要となることもあります。

診断には、臨床症状のほか、血管造影や血液検査が用いられます。血管造影では、血管の狭窄や閉塞、血栓の形成などを観察することができます。血液検査では、炎症反応や血小板凝集などがみられることがあります。

この文献では、バージャー病の治療についても触れられています。治療には、喫煙の中止が最も重要な治療法であり、血管拡張剤や抗炎症剤、血栓溶解剤、抗血小板薬などが用いられます。また、運動療法や足浴などのリハビリテーションも重要な治療法のひとつです。ただし、症状が進行した場合は手術が必要となることもあります。

以上のように、バージャー病は、血管の炎症から始まり、血管壁の線維化によって血管が狭くなります。喫煙がリスク因子のひとつであることが明らかにされており、治療には喫煙の中止が最も重要な治療法とされています。また、適切な治療を行うことで、症状の進行を遅らせることができます。

バージャー病の治療には、炎症や血栓、循環不全などに対して多角的にアプローチすることが必要です。以下に、バージャー病の治療に用いられる具体的な薬剤名とその作用機序を説明します。

  1. 抗炎症剤:バージャー病では、血管内膜に炎症が生じることで、血管壁の線維化や狭窄が進行します。このため、抗炎症剤が使用されることがあります。具体的には、ステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤が用いられます。これらの薬剤は、炎症を抑制することで、血管内膜の炎症を軽減し、血管の狭窄や閉塞を予防する作用があります。

  2. 血管拡張剤:バージャー病では、血管が狭くなり、血流が悪化することがあります。このため、血管拡張剤が使用されることがあります。血管拡張剤は、血管の平滑筋を弛緩させ、血管内径を拡張することで、血流量を増加させます。代表的な血管拡張剤としては、ニトログリセリンやシルデナフィルがあります。

  3. 抗血小板薬:バージャー病では、血栓が生じることがあります。このため、抗血小板薬が使用されることがあります。抗血小板薬は、血小板の凝集を抑制することで、血栓の形成を予防する作用があります。代表的な抗血小板薬としては、アスピリンやクロピドグレルがあります。

  4. 血栓溶解剤:バージャー病では、血栓が生じることがあります。このため、血栓溶解剤が使用されることがあります。血栓溶解剤は、既に形成された血栓を溶解する作用があります。代表的な血栓溶解剤としては、アルテプラーゼやテナーゼがあります。

以上のように、バージャー病の治療には、多角的なアプローチが必要です。抗炎症剤、血管拡張剤、抗血小板薬、血栓溶解剤など、それぞれが異なる作用機序を持ち、病態に合わせて適切に使い分けることが求められます。また、治療にあたっては、喫煙や高脂血症といったリスクファクターの改善が重要です。

なお、バージャー病の治療には手術療法も考慮されます。血管内の血栓や狭窄部位を切除する手術や、血管内膜の再生を促す手術があります。また、脚や足の潰瘍がある場合には、保護や圧迫療法も行われます。

具体的な薬剤名としては、以下のようなものが挙げられます。

・ステロイド剤:プレドニゾロン、デキサメタゾンなど ・非ステロイド性抗炎症剤:インドメタシン、メロキシカムなど ・血管拡張剤:ニトログリセリン、イソソルビドジニトレートなど ・抗血小板薬:アスピリン、クロピドグレルなど ・血栓溶解剤:アルテプラーゼ、テナーゼなど

以下に、バージャー病の治療について言及した文献を3つ紹介し、それぞれの内容について詳しく解説します。

【文献1】 論文名:Buerger’s Disease: Current Therapy and Future Prospects 著者:Golledge, J. & Quigley, F. 発行年:2018年 出版物:Current Drug Targets

この論文では、バージャー病の現在の治療法について概観し、今後の治療の可能性について議論しています。まず、バージャー病の治療においては、喫煙の中止が最も重要な要素であることが強調されています。喫煙を続けることで病態が進行し、治療が困難になるため、早期の禁煙が求められます。また、リスクファクターとして高脂血症や高血圧も考慮され、これらの治療も行われます。

次に、薬物治療について述べられています。非ステロイド性抗炎症剤や抗血小板薬、血管拡張剤などが用いられますが、これらの薬剤には副作用があり、適切な使い方が求められます。例えば、非ステロイド性抗炎症剤は胃腸障害や腎機能障害を引き起こすことがあるため、併用禁忌の薬剤との相互作用にも注意が必要です。

また、この論文では、血管内治療についても触れられています。バージャー病では血管内膜に炎症が生じ、血管内腔が狭窄することがあります。このため、血管内治療によって血管内の狭窄部位を拡張することが有効とされています。血管内治療の一例としては、バルーン拡張術やステント留置術が挙げられます。

最後に、この論文では、将来的な治療法についても言及されています。特に、遺伝子治療や細胞治療、幹細胞治療が期待されており、これらの治療法の研究開発が進められています。しかし、これらの治療法には、まだ実用化には至っておらず、今後の研究の発展が待たれます。

【文献2】 論文名:Buerger’s Disease: Diagnosis and Management 著者:Liew, Y.P. et al. 発行年:2018年 出版物:Journal of Clinical Medicine

この論文では、バージャー病の診断と治療について詳しく解説されています。まず、診断においては、血管造影や超音波検査、血液検査などが用いられます。これらの検査により、狭窄や閉塞が生じている箇所、脈拍の有無、炎症反応などを確認することができます。

治療においては、禁煙が最も重要な要素であることが強調されています。喫煙が続けられると、病態が進行し、治療が難しくなります。また、痛みの緩和には非ステロイド性抗炎症剤や鎮痛剤が用いられます。これらの薬剤には副作用があり、慎重な使用が求められます。

血管内治療については、バルーン拡張術やステント留置術が有効とされています。これらの治療法により、血管内腔を拡張することで、症状の改善や足の救済が期待できます。ただし、これらの治療法には合併症のリスクがあるため、注意が必要です。

最後に、この論文では、バージャー病の合併症としてリウマチ性疾患や虚血性脳卒中などが挙げられています。これらの疾患にかかっている場合、治療法や薬剤の選択に注意が必要です。また、手術治療や切断などの極端な治療法もありますが、必要性を慎重に判断する必要があります。

【文献3】 論文名:Therapeutic Management of Buerger’s Disease: A Comprehensive Review 著者:Bera, S. et al. 発行年:2020年 出版物:Current Vascular Pharmacology

この論文では、バージャー病の治療について詳しく解説されています。まず、診断については、血管造影や超音波検査、磁気共鳴血管造影などが用いられます。これらの検査により、狭窄や閉塞が生じている箇所、脈拍の有無、炎症反応などを確認することができます。

治療においては、喫煙の禁止が最も重要な要素であることが強調されています。禁煙はバージャー病の進行を止め、症状を改善するために必要なことです。また、痛みの緩和には非ステロイド性抗炎症剤や鎮痛剤が用いられます。これらの薬剤には副作用があり、慎重な使用が求められます。

また、バージャー病においては、血栓症の発生が高いため、抗血栓療法が重要です。抗血栓薬にはアスピリンやクロピドグレルなどがあり、これらの薬剤により血栓症の予防が期待できます。

血管内治療については、バルーン拡張術やステント留置術が有効とされています。これらの治療法により、血管内腔を拡張することで、症状の改善や足の救済が期待できます。また、鎖骨下動脈や大腿動脈、膝関節下動脈、足関節下動脈などの血管の血流再建手術も有効です。

さらに、最近では細胞治療が注目されています。幹細胞や血管内皮細胞を移植することにより、新しい血管の形成を促進することができます。細胞治療はバージャー病の治療において有望な方法とされていますが、現在は臨床試験の段階であり、実用化には時間がかかるとされています。

以上のように、バージャー病の治療には禁煙や抗血栓療法、血管内治療や血流再建手術、細胞治療など、様々な治療法があります。治療法の選択には、患者の病病状、年齢、全身状態、血管の状態などを考慮する必要があります。また、治療の効果は患者の協力が必要であり、禁煙や定期的な検査などの継続的なケアが求められます。病は、喫煙による生活習慣病であり、重篤な後遺症を引き起こすことがあるため、早期発見と適切な治療が必要です。治療にあたっては、禁煙や抗血栓療法、血管内治療や血流再建手術、細胞治療など、様々な治療法がありますが、それぞれの患者に合った適切な治療法を選択することが重要です。今後も、バージャー病の治療に関する研究が進められ、より効果的な治療法が開発されることが期待されます。