院長ブログ

健康講座691 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と微小血管疾患のリスク:科学的根拠と臨床的意義

みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、全世界で最も一般的な肝疾患であり、その影響は肝臓だけにとどまらず、心血管疾患や2型糖尿病(T2D)などの他の代謝疾患とも関連しています。しかし、NAFLDが微小血管疾患のリスクにどのように影響するかについては、まだ十分に理解されていません。この記事では、最近の研究に基づき、NAFLDと微小血管疾患のリスクとの関連性を詳しく説明します。

NAFLDとは何か?

NAFLDは、アルコール摂取が原因ではない肝臓の脂肪蓄積を特徴とする疾患です。NAFLDは、肝臓の炎症や肝硬変、さらには肝臓がんへと進行する可能性があります。しかし、NAFLDの影響は肝臓だけにとどまらず、心血管疾患や2型糖尿病などの他の代謝疾患とも関連しています。

微小血管疾患とは何か?

微小血管疾患は、体の微小血管(毛細血管)が損傷する疾患で、主に糖尿病や高血圧の患者に見られます。微小血管疾患は、視力低下や腎臓の機能低下など、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。

NAFLDと微小血管疾患の関連性

最近の研究では、NAFLD患者は非NAFLD患者に比べて微小血管疾患のリスクが高いことが示されています。この研究は、2002年から2019年までのスウェーデンの全国的な患者登録を使用して行われました。初めてNAFLDの診断を受けた6785人の患者と、一般人口から選ばれた61136人の参照個人を比較しました。

この研究の結果、NAFLD患者の微小血管疾患の発症率は、参照個人に比べて2倍以上高いことが明らかになりました。具体的には、NAFLD患者の微小血管疾患の発症率は1000人年あたり10.8(95%信頼区間(CI)= 9.9-11.8)であり、参照個人のそれは1000人年あたり4.7(95%CI = 4.5–4.9)でした。

さらに、この研究では、NAFLDが微小血管疾患の発症と独立して正の関連があることが示されました。具体的には、NAFLD患者の微小血管疾患の調整ハザード比(aHR)は1.45(95%CI = 1.28–1.63)でした。これは、NAFLDが微小血管疾患のリスクを45%増加させることを意味します。

結論と臨床的意義

この研究の結果は、NAFLDが微小血管疾患のリスクを増加させる可能性があることを示しています。これは、NAFLD患者のリスク評価において、微小血管疾患の発症リスクを考慮に入れるべきであることを示唆しています。

さらに、この研究の結果は、NAFLDの管理において、心血管疾患や2型糖尿病だけでなく、微小血管疾患のリスクも考慮に入れるべきであることを示しています。これは、NAFLDの管理において、全身的なアプローチが必要であることを示しています。

参考文献

Ebert, T., Widman, L., Stenvinkel, P., & Hagström, H. (2023). Increased risk for microvascular outcomes in NAFLD—A nationwide, population-based cohort study. Journal of Internal Medicine. https://doi.org/10.1111/joim.13673