院長ブログ
2023.07.11 | お知らせ
健康講座716 ”脂肪肝改善の鍵は糖新生にあり: ダイエットと健康管理の新たな視点”
みなさんこんにちは。小川糖尿病内科クリニックのです。今回のトピックは、食事を抜くと低血糖になるという誤解について、そして空腹時の身体の反応、特に「糖新生」に焦点を当ててお話しします。
まず始めに、一般的に「食事を抜くと低血糖になる」と思われがちですが、これは正確ではありません。実は、私たちの体は、食事を通じて得たエネルギー源を優先的に使い、そのエネルギーが不足すると体内に蓄えられたエネルギー源を利用します。これは体内の糖質(グリコーゲン)、脂肪、そして最終的には蛋白質を糖に変換するという、体の自然な防衛メカニズムの一部です。これを「糖新生」と呼びます。
この「糖新生」は、空腹時に血糖値を一定に保つための体の戦略であり、特に肝臓がこのプロセスを担当します。脂肪と蛋白質から糖を生成することで、身体のエネルギー需給を維持します。このため、必ずしも食事を摂らなければ低血糖になるとは限らないのです。しかしこの理解が普及していないため、多くの人が食事を抜くとすぐに低血糖になると思い込んでいます。
これに対して、空腹時に飴をなめる、缶コーヒーを飲む、羊羹を食べるなどの行動は、血糖値を急激に上昇させる可能性があります。これにより、糖新生のプロセスが妨げられ、脂肪肝の改善に悪影響を及ぼす可能性があります。
脂肪肝とは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態を指し、長期的には肝疾患のリスクを高めます。したがって、糖新生がうまく機能することで、脂肪肝の改善が期待できるのです。
この点については、多くの科学的な研究が行われており、その一部をここで紹介します。例えば、”Starvation-Induced Hepatic Production of D-BHB is Protective Against Dioxin-Induced Hepatic Steatosis”という2017年の研究では、断食が糖新生を活性化し、脂肪肝の改善に役立つことが示されています(Biochemical Pharmacology, 2017)。
また、”Physiological Regulation of Gluconeogenesis”という論文でも、肝臓の糖新生の重要性が強調され、それが維持されることで身体がエネルギーバランスを調整し、健康を保つことができると報告されています(Molecular Aspects of Medicine, 2006)。
ただし、これらの知識は個々の健康状態や生活習慣により異なる効果をもたらすことを理解していただく必要があります。特に、糖尿病など特定の病状のある方は、適切な医療のアドバイスが必要です。
全体的に言えることは、身体のエネルギー管理のメカニズムを理解し、それに基づいて健康的な食生活を送ることが大切であるということです。栄養バランスを保つこと、適度な運動を行うこと、ストレス管理をすることなどが、健康を保つために重要な要素となります。これらが健康維持の基盤となり、糖新生のような身体の自然なプロセスが円滑に進むことで、低血糖や脂肪肝などの問題から自身を守ることが可能になります。