院長ブログ

健康講座649 ”インスリン治療への道:より良い血糖管理のための戦略”

みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

 糖尿病という病気について考えてみましょう。あなたが甘いお菓子を食べると、そのお菓子は体の中でブドウ糖(これが私たちのエネルギー源です)に変わります。そして、このブドウ糖を体の中に運び入れるためには「インスリン」という鍵が必要です。でも、糖尿病の人はこの鍵が上手く機能しないか、あるいは十分な量がないのです。

だから、糖尿病の治療の一つとして、「インスリン」を注射して補充する方法があります。体の中に直接インスリンを送り込むことで、ブドウ糖が上手く体の中に運ばれ、エネルギーとして使われるようになります。

でも、このインスリン治療、始めるのはちょっと怖いですよね。針を使うし、自分で注射をしなければいけないからです。でも、インスリン治療は本当に安全で、しかも効果的な治療法なんです。なんと、お腹の中に赤ちゃんがいる妊婦さんが糖尿病になったときに使うことが許されている唯一の治療薬が、このインスリンなんです。だから、安全性は折り紙つきです。

そして、早くからインスリン治療を始めると、必要なインスリンの量も少なくて済むことが多いんです。だから、怖がらずに早く始めてみましょう。もちろん、一時的に試すだけでも大丈夫です。

実は、糖尿病が初めて診断されたときから、すぐに基礎インスリンだけでなく、さらに強化インスリン療法を用いて血糖値を正常範囲にすることは、口から服用する糖尿病薬で治療するよりも、その後インスリン治療を止めた1年後の膵臓内のβ細胞の働き(インスリンを作る細胞)にとって良いとの報告があります。また、治療を受けずに生活できる人の割合も高いそうです。

インスリン療法を始めるべきかどうかを判断するには、個々の患者さんの状況を詳しく考慮する必要があります。例えば、糖尿病が強く疑われる方、血糖コントロールがうまくいっていない妊娠希望の女性、急性の代謝異常が発生した方、またはそれが発生するリスクが高い方などは、インスリン療法を始めるべきと考えられます。また、急性の感染症などインスリン注射が始まったら、必ずしもすぐに低血糖症状を引き起こすわけではありません。始めての段階ではインスリンの量も少なく、低血糖症状は問題にならないでしょう。注射に抵抗感がある方には、まずはインスリン自己注射の方法を教え、それから自分で血糖値を測る方法を学んでいただくと、受け入れやすいかもしれません。

その後、血糖自己測定を始めると、数日でインスリンが効いているかがわかるようになります。ただし、医師との診察間隔は、予約の都合によるため、緩やかな調整が必要かもしれません。また、インスリン治療を始めたからといって、これまでの薬をすぐに止めるのは避けるべきです。それは、インスリン導入直後の急な病状悪化を防ぐためです。

インスリンと他の薬を安全に組み合わせる方法については、例えば、長時間作用型インスリンと速効型インスリン分泌促進薬や、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬などを併用すると良いでしょう。また、超速効型インスリンと併用する場合には、少量のSU薬やビグアナイド薬、チアゾリジン薬と併用すると良いとされています。

ただし、組み合わせる薬は、患者さんの病状や体調によって適切なものを選ぶことが重要です。特に、患者さんが糖尿病以外にも病気を持っている場合や、複雑な病状の場合には、適切な判断が求められます。

さらに、糖尿病が発症してから平均して4.5年が経過した患者でも、中間型のインスリンを1日2回、超速効型のインスリンを1日3回使用することで、4週間で血糖値を正常範囲近くまでコントロールすることが可能となり、インスリンの作用を強めるGIPとGLP-1という物質に対する反応も良くなるとの報告もあります。

そして、インスリン治療を始めたあとは、医者や看護師と一緒に、自分の血糖値をチェックしながら、必要なインスリンの量を調整していきます。医者が、あなたの体調や生活習慣を見ながら、最適な治療方法を考えてくれるので、安心してください。