院長ブログ
2021.12.12 | お知らせ
健康講座409 高齢者における三大合併症 神経障害編
みなさんどうもこんにちは。
小川糖尿病内科クリニックでございます。
神経障害は糖尿病合併症の中で最も多く、高齢糖尿病患者でも多く見られます。自覚症状、アキレス腱反射の低下・消失、下肢振動覚低下により診断しますが、高齢者では下肢振動覚が低下しており、70歳代では9秒以内、80歳以上では8秒以内を振動覚低下とすることが提案されています10)。自律神経障害の検査としてCVR-Rがありますが、高齢者では、加齢に伴い低下しているほか、β遮断薬の内服でも低下するため、結果の解釈に注意が必要です。
しびれなどの自覚的な症状がないまま感覚障害が進行する例もあるため、自覚症状がない場合でも定期的な評価が必要です。とくに、下肢感覚障害が高度である場合には、潰瘍形成などの確認のためフットチェックが重要です。
高齢者糖尿病では末梢神経障害があると、サルコペニア、転倒、認知機能低下、うつ傾向などの老年症候群を起こしやすくなります。神経障害が進行し、重症になると感覚障害だけではなく運動障害も出現し、筋力低下やバランス障害を伴い、転倒リスクが高くなります。加えて、自律神経障害の起立性低血圧や尿失禁も転倒の誘因となります。また、自律神経障害の無緊張性膀胱は、尿閉や溢流性尿失禁を起こし、尿路感染症の誘因となります。しびれや有痛性神経障害はうつのリスクやQOLの低下だけでなく、死亡リスクにも影響します。自律神経障害が進行すると神経因性膀胱による排尿障害、便秘、下痢などが出現することがあります。さらには、無自覚低血糖、無痛性心筋虚血のリスクも高まります。無自覚低血糖がみられる場合には、血糖目標の緩和も考慮します。
また、急激な血糖コントロールによりしびれや痛みが増悪する場合があり(治療後神経障害)、高血糖が長期に持続していた例などでは緩徐なコントロールを心がけています。
中等度以上のしびれや痛みに対しては、デュロキセチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者では副作用の点から三環系抗うつ薬は使用しづらく、デュロキセチンかプレガバリンを最小用量から開始し、少なくとも1週間以上の間隔をあけて漸増しています。共通して眠気やふらつきの副作用により転倒のリスクが高まることに注意が必要です。また、デュロキセチンでは高齢者で低Na血症のリスクが高くなることも報告されています。
参考にしてもろうて。
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