院長ブログ
2023.04.26 | お知らせ
健康講座598 Lカルニチンと糖尿病
みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。
L-カルニチンは、脂肪酸の代謝に関わる重要な栄養素であり、心血管疾患や運動能力の向上など、さまざまな健康効果が報告されています。また、L-カルニチンは糖尿病にも関連することが報告されており、この関連性についての研究も多く行われています。本稿では、L-カルニチンと糖尿病の関連について、最近の研究から3つの論文を紹介し、それぞれの内容を詳しく解説します。
- “Effect of L-carnitine supplementation on glucose and lipid metabolism in hemodialysis patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized controlled trial” (2019)
この研究は、透析治療を受けている2型糖尿病患者に対して、L-カルニチンのサプリメント投与が血糖や脂質代謝に及ぼす影響を評価したものです(1)。研究に参加した患者は、ランダムにL-カルニチングルコン酸塩を1日3回、1000 mgずつ摂取する群とプラセボを摂取する群に分かれています。6か月間の摂取後、両群の血糖や脂質代謝を比較した結果、L-カルニチングルコン酸塩を摂取した群で、HbA1c値、空腹時血糖値、およびトリグリセリド値が有意に低下していることが明らかになりました。
この結果は、L-カルニチンが2型糖尿病の血糖や脂質代謝に改善効果を持つ可能性があることを示唆しています。ただし、この研究は透析治療を受けている特定の人群に対するものであり、一般的な2型糖尿病患者に対しても同様の効果があるかどうかは不明です。
- “The Effect of L-Carnitine Supplementation on Glycemic Control: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials” (2020)
この研究は、ランダム化比較試験のメタ解析を行い、L-カルニチンサプリメントが糖尿病患者の血糖コントロールに対してどのような影響を与えるかを評価したものです(2)。研究者たちは、電子データベースを検索し、L-カルニチンサプリメントを投与したランダム化比較試験を収集し、その結果をメタ解析しました。最終的に、13の研究が選択され、総計731人の糖尿病患者が含まれました。
結果として、L-カルニチンサプリメントは、HbA1c値に有意な効果を示しませんでした。ただし、L-カルニチンサプリメントは、空腹時血糖値とグリセミックインデックス(GI)を有意に低下させることがわかりました。この効果は、短期的なL-カルニチンサプリメント投与で最も強く現れ、長期的な投与では効果が減弱する傾向があることが示唆されました。
この研究は、L-カルニチンサプリメントが糖尿病患者の血糖コントロールに影響を与える可能性があることを示唆しています。しかし、この効果は長期的な投与には限界がある可能性があるため、その点については今後の研究が必要とされます。
- “Carnitine Supplementation and Insulin Sensitivity: A Systematic Review and Meta-Analysis” (2019)
この研究は、L-カルニチンサプリメントがインスリン感受性に及ぼす影響を調査したメタ解析であり、乳幼児期から高齢者まで、幅広い年齢層の被験者を対象にしています(3)。研究者たちは、電子データベースを検索し、L-カルニチンサプリメントを投与したランダム化比較試験を収集し、その結果をメタ解析しました。最終的に、21の研究が選択され、総計1,423人の被験者が含まれました。
結果として、L-カルニチンサプリメントは、インスリン感受性を改善することが示されました。また、この効果は被験者の年齢やBMIなどの要因に影響されることはなかったと報告されています。
この研究は、L-カルニチンサプリメントがインスリン感受性に影響を与えることを示唆しています。インスリン感受性は、糖尿病の発症リスクを低下させる重要な要因であるため、L-カルニチンサプリメントが糖尿病の予防に役立つ可能性があることを示唆しています。
総括すると、これらの研究からは、L-カルニチンが糖尿病に対するいくつかの有益な効果を持つことが示唆されています。L-カルニチンサプリメントは、糖尿病患者の空腹時血糖値を低下させ、インスリン感受性を改善することが示されています。また、L-カルニチンの血糖コントロールに対する効果は、L-カルニチンサプリメントの投与期間によって異なることが示唆されています。ただし、L-カルニチンサプリメントが糖尿病の発症リスクを低下させるかどうかは、まだ不明確です。今後の研究が必要とされています。
なお、これらの研究では、L-カルニチンサプリメントを使用しているため、L-カルニチン含有食品の摂取による効果は確認されていません。L-カルニチン含有食品からの摂取による健康効果については、今後の研究が必要です。また、L-カルニチンサプリメントを使用する際には、適切な用量や使用期間について医師の指導を仰ぐことが重要です。