院長ブログ

健康講座864 高齢者糖尿病患者に最適な運動の選び方:運動の強さ、形式、頻度が血糖管理に与える影響

 

 

ある研究では、糖尿病を患う60歳以上の方にとって、どのような運動が血糖値の改善に効果的かを調べました。運動は、血糖値を下げ、健康状態を良くするために非常に重要です。しかし、運動の強さや種類、どのくらいの頻度で行えばいいかを理解している方は少ないかもしれません。この研究を基に、高齢の方にもわかりやすく、どのような運動が効果的かを説明します。

1. 運動の強さについて

研究によると、運動の強さ(運動の負荷や疲労感)は血糖値に大きな影響を与えます。

  • 中強度の運動(例えば、少し息が上がる程度のウォーキングや軽い体操など)は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)と呼ばれる、長期間の血糖値を反映する指標を効果的に下げることができます。研究結果では、HbA1cが約0.34%下がったことが確認されています。これは、日常生活の中に取り入れやすく、無理なく続けられる運動のレベルです。

  • 高強度の運動(例えば、速歩や軽いランニング、筋力トレーニングなど)は、さらに大きな効果を示し、HbA1cを約0.54%下げることがわかりました。ただし、高齢の方の場合は、急激に強い運動をすることが体に負担になることがありますので、まずは中強度の運動から始め、徐々に運動強度を上げていくことが重要です。特に、医師に相談しながら進めるのが安全です。

2. 運動の種類について

運動には、いくつかの種類がありますが、研究では特に有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)と、抵抗運動(筋力トレーニングやスクワットなど)の違いについて調べました。

  • 有酸素運動は、呼吸を意識しながら長時間行う運動です。ウォーキングや自転車に乗ること、軽いダンスなどがこれに当たります。これらは心肺機能を高め、血流を促進することで、血糖値のコントロールに役立ちます。

  • 抵抗運動は、筋肉に負荷をかける運動です。筋力を維持するために大事で、筋肉量が増えることで、血糖の吸収が促進され、血糖値を下げる効果があります。

研究の結果、これら2つの運動の間で血糖値を下げる効果には大きな差はありませんでした。つまり、どちらの運動を選んでも効果的ですので、ご自分に合った運動を取り入れていただくと良いでしょう。ウォーキングや筋力トレーニング、どちらも適度に組み合わせることで、さらに健康に良い影響が期待できます。

3. 運動の時間について

運動をどれくらいの時間行えば良いかは、多くの方が気になるポイントです。研究では、週に2.5時間以上の中強度の運動を行うことで、HbA1cが特に改善されることがわかっています。これを日々の生活に取り入れるためのポイントは以下の通りです。

  • 1日30分の運動を週5回行うと、合計で2.5時間になります。これなら無理なく続けられますし、日常のスケジュールにも組み込みやすいでしょう。
  • ウォーキングや軽い体操、家の中でできるストレッチなどを毎日少しずつ続けることで、長期的に見て血糖値の管理に大きな効果が得られます。

まとめ

糖尿病を患う60歳以上の方でも、適度な運動を行うことで、血糖値の改善や健康維持が可能です。特に、中強度から高強度の運動を週に2.5時間以上行うことが、血糖値のコントロールに最適です。有酸素運動や抵抗運動のどちらでも効果がありますので、ご自身に合った方法を選び、楽しみながら続けていただければと思います。

 

また、運動を始める際には、無理をせず、ご自身の体調に合わせて行うことが大切です。定期的に医師のアドバイスを受けながら、安全に運動を取り入れていきましょう。